感想2…

『中庭の出来事』
 同盟の作中劇『中庭の出来事』を使い、作中の虚実を入り交ぜて織りなした幻惑小説。 虚実が入れ子の様になっているため、頭がぐるぐるとしてきます。 虚実を見極めるとか、そういった推理小説の様な読み方をするものではなく、ごちゃごちゃした頭のまま楽しむべき本

『神のふたつの貌』
 「巧妙な仕掛けを駆使し、”神の沈黙”という壮大なテーマに挑んだ、21世紀の「罪と罰」」(裏表紙のあらすじより)。
 ミステリー作品としても良し、神の愛・救いを求め続けるひとりの人間の魂の記録として読んでも良し、と一度で二度おいしい作品。無痛症の人の人格形成については疑問があるものの(専門的知識があるための疑問ではないが、小説的には割とステレオタイプな処理だと思うが、本当にそういった傾向にあるのかという疑問)、話は面白かった。哲学や神学的な議論も面白い。
 
『探偵宣言』
 ミステリー短編集。 芦部さんの『殺人喜劇の13人』を読もう読もうと思って忘れていたことを思い出したので、とりあえずは目についたこちらから読むことにした次第。
 この短編集も、同じ探偵・森江春策を主人公にしたもの。学生時代、記者時代、弁護士時代、探偵時代と、森江春策が各時期に遭遇した事件を描く。最近の本(この本ではない)はイロモノの様な気がして手を出していなかったが、この本はしっかりした(というと失礼か)舞台で推理が展開されていて、普通に面白かった。

『廃用身』
 「廃用身」は、脳梗塞などの後遺症によるマヒなどで回復の見込みがない四肢のこと。
 介護医療の問題にすごい方向から切り込んだ問題作(良い意味で)。 本書では、介護の際に邪魔になり介護者・被介護者ともに負担になるだけの廃用身を切断し、介護負担を軽くしてはどうかというアイデアを実行に移した医師を主人公にした社会派医療作品
 廃用身という不要な四肢の切除は悪かをテーマにしており、非常に考えさせられる。様々な面で介護が社会問題化している現在だからこその小説(刊行は2003年)。

『記憶屋Ⅱ、Ⅲ』
 タイトルはⅡ、Ⅲとあるが、内容としては『記憶屋Ⅱ 上・下』とした方が分かりやすいかと。
 前作『記憶屋』を読んでいたので、とりあえずシリーズを最後まで読もうと思い購入。今更の購入は、前作があまり好きではなかったため。
 今回は、記憶屋の正体探しがメインに据えられたミステリー仕立て。記憶屋探しパートは面白いが、正論で攻め立てる新聞記者(前作の登場人物?)が煩く、最後に明かされる記憶屋の正体がまた…。

『四人制姉妹百合物帳』
 タイトルそのままの作品。同人作品の文庫化だそう。
 石川さんの『ヴァンパイア・サマータイム』がとても好きだったので、購入してみた次第。結果は……。同人誌のままでよかったのでは。

『湖底のまつり』
 「命を救われ、一夜結ばれた男性は、一月前に死んでいた?」 記憶と現実の齟齬を基調とした、目くるめく幻惑の世界。
 叙述トリックというか、丁寧に積み上げられた伏線が作り上げる見事な創作世界に引き込まれる。ネタを知っては存分に楽しめないであろう作品なので、未読の方は作品の素性をあらすじ以上には調べずに読むことをおススメします。


『櫻子さん~13』
 こちらもとりあえずの続編。 鴻上ちゃんの突然の豹変に戸惑う。が、正太郎への悪罵には全面的に賛同w
 「帰ってきたテディベア」が、最近では一番良かった。出る出る詐欺師が関係ないからか…。
 そういえば、いつだったか実写ドラマ化されたようでしたが、評価とかはどうだったんですかね。

『ランゴリアーズ』
 文春版。「ランゴリアーズ」と、「秘密の窓、秘密の庭」の二編を収録した版。
 「ランゴリアーズ」が思っていたよりも、パニックホラー風味で驚いた。『冷たい校舎の時は止まる』の様な、静かなホラーかと勝手に想像していた。そのうえどんどん登場人物が脱落していく。ダイナとニックの脱落は哀しかった。

『ゆるキャン』
 タイトル通り、女子高校生5人の「ゆる~いキャンプ」生活を描くコミックス
 まったりほのぼのした作風だが、アウトドア知識もしっかりと盛り込まれていて、ためになるかも。また実在のキャンプ場や観光名所なども登場しているので(名称は変更されていたりする)、ちょっとした旅行気分も味わえるかも(主はガチガチのインドア派なので、新鮮味を感じられて楽しめた)。


 今回はこんなところです。
 他には、『謎の彼女X 9∼11』を読みました。残りは入手できず。 謎の可愛さがありますね、卜部には。
 また積読も増えて来たので消化頑張ります(山が出来ている)。

 小野不由美『営繕かるかや怪異譚』と同日発売の、宮部みゆき『過ぎ去りし王国の城』も一緒に購入したのですが、こちらは未読。これから読みます。
 
それではまたノシ。
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小野不由美 『営繕かるかや怪異譚』 他感想…

 先週末に法事がありまして、遅くなりました。
 今回の分の更新です。
 長くなるので、感想は新刊と既刊で分けようかと思います。

新刊
・小野不由美       『営繕かるかや怪異譚』        ☆3.5
・藤石波矢        『時は止まったふりをして』       ☆2.5
・乾緑郎          『機巧のイヴ 新世界覚醒編』     ☆3.5
・山田宗樹        『代体』                   ☆3.5

ラノベ
・時雨沢恵一       『ガンゲイルオンライン Ⅶ(上)』    ☆3.5

既刊

・ 恩田陸         『中庭の出来事』              ☆3.5
・貫井徳郎        『神の二つの貌(かお)』          ☆3.5
・芦部拓          『探偵宣言』                 ☆3.5
・久坂部羊        『廃用身』                   ☆4
・織守きょうや      『記憶屋 Ⅱ、Ⅲ』              ☆2.5
・石川博品        『四人制姉妹百合物帳』          ☆2.5
・泡坂妻夫        『湖底のまつり』               ☆4
・太田紫織        『櫻子さん~ 13』              ☆2.5
・S. キング        『ランゴリアーズ』               ☆3

コミックス
・あfろ           『ゆるキャン△ 1∼6』            ☆4



感想1
『営繕かるかや怪異譚』
 ホラー作品。 とは言え、小野さんの他のホラー作品『奇談百景』などの様な純ホラーではなく、宮部みゆき「三島屋シリーズ」のような怖い話でありながら、いい話を収める短編集。
 建物にまつわる怪異を、建物を修繕・新築することで収める不思議な青年が主人公。鳥肌が立つような恐怖ではない代わりに、じわじわと染み入ってくる。「雨の鈴」は怖い。

『時は止まったふりをして』
 過ぎ去った青春時代を振り返る、青春恋愛ミステリー。
 帯裏にある「誰が誰を好きとか、そんな話が大きな秘密になりえた時間」を振り返る話。綺麗な思い出に浸っているだけの様な気がして好きになれず。 終盤明らかにされる真相は取って付けた感動の様な気がして、萎えた。

・『機巧のイヴⅡ』
 サブタイトルの通り、前回から一転「新世界」(アメリカの様な異国)で目覚めるイヴを描く。
 少々残念なことに、前作の様な伝奇SF作品の雰囲気はほぼ無いので、前作が気に入っている人の中には今作が面白くないという人もいるかも。 しかも時代が100年ほど下っており、前作の登場人物のほとんどは名前のみの登場。
 今作の、イヴを巡る陰謀、アドヴェンチャーの雰囲気を楽しめれば面白く読めるかと。個人的には虚実入り混じった世界観が面白かった。

『代体』
 SFサスペンス。 アバター、義体、サイボーグと言えば、どんな話かはイメージできる。
 序盤から中盤のいかにもなSFサスペンス部分は面白く読めたが、終盤のメタ意識的な話はイマイチだった。若干突飛な感じ。そのうえ、超知能・超意識といったものを宿した存在があんなものを追い求めるのだろうかという疑問も。 山本弘『神は沈黙せず』に似たような展開と回答だったのが、残念だった。
 義体を媒介にした、死の定義についての議論は面白かった。

『GGOⅦ』
 アニメが放送中とのこと。
 今回は、第4回スクワッド・ジャム。 レンこと香蓮の身に突如降ってわいた婚約騒動。 相手は実に嫌な正論人間なので、爽快にやっつけることを希望。そしてボスたちSHINCの行動の意図はどこに? 


感想2に続く。

阿部智里 『玉依姫』他感想…

 それでは、今回の分の紹介と感想です。

新刊
・阿部智里      『玉依姫』       ☆4
・小路幸也      『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』   ☆4

 ラノベ・コミックス

・葵せきな      『ゲーマーズ! 10』     ☆4
・末次由紀      『ちはやふる 38』     ☆4


既刊
・東野圭吾      『ラプラスの魔女』      ☆3
・藤原伊織      『テロリストのパラソル』   ☆4
・竹本健治      『将棋殺人事件』       ☆2.5
・島田荘司      『聖籠の海 上・下』     ☆3.5
・萩尾望都      『11人いる!』          ☆4
・シギサワカヤ    『九月病 下』         ☆3.5
・ギブスン、スターリング  『ディファレンス・エンジン』   ☆3
・コクトー        『恐るべき子供たち』     ☆3.5


感想

『玉依姫』
 「八咫烏シリーズ」の最新刊。
 「山内」の秘密、山神の正体、失われた先代金烏の記憶、などなどこれまでのシリーズ内で残された数々の謎が明かされる。女性はというか、「母は強し」という格言を再確認w さて、フレイザーよろしく王というか神が交代したわけだが、山内はどうなるのだろうか。一部完となる次巻「弥栄の烏」が待ち遠しいところ

『東京バンドワゴン』

 こちらもシリーズ最新刊。 「呪いの目録」を巡って事件再び。とは言え、「呪い」所以となったような切った張ったの事件ではない。 が、巡り巡ってロンドンへ行くことになったものの、当地でもべらんめぇな勘一さん、流石ですw
 他にも花陽の受験を巡るあれこれ、研人デビュー(?)などなど。ふじしまんはすごい(色々な意味で)。

『ゲーマーズ!』

 魔王攻略後、レベルアップした人による一波乱の回。 作中ではバレンタインを巡るドタバタがメイン。
 個人的には、コトハが想いを口にしたことが若干意外。黙って身を引くのかとも。ただ、このままフェードアウトして出番が少なくなりそうなところが気になる(;´Д`) 

『ちはやふる』

 代表決定戦始まる。
 今巻の見どころは、不穏な出だしの新VS.太一。 ぶちぎれる原田先生。 詩暢ちゃん初めてのお出かけ、の三本立て。
 
『ラプラスの魔女』
 東野版『ネクサス』というか、『ジェノサイド』と言おうか。 ポストヒューマン・テーマのようなミステリー作品。 『プラチナ・データ』の様なSF寄り作品。 超人的な計算能力を犯罪行為に使う男と、それを止めようとする同類の少女の話。 どこかで読んだような感じで、イマイチ盛り上がれず。映画の方も推して知るべしか…。

『テロリストのパラソル』

 ミステリー作品。 爆弾テロに遭遇、そこで過去の恋人がテロに巻き込まれたことを知り、事件を追うことになる元過激派の男の見た真実とは。
 ミステリーではあるが、逃亡犯を主人公に据え、社会の裏側を描く社会派小説のようでもあり、アル中のダメ主人公がハードボイルドを感じさせる不思議な作品。見どころが沢山ある、魅力的な作品と言うことです。 乱歩賞と直木賞を受賞
 
『将棋殺人事件』
 以前、他の作品を読んだと思ったので、それと同じく「ゲーム三部作」の一つである本作を読んでみた。 随所にみられる詰め将棋の蘊蓄は、事件の本筋とはほぼ無関係という…。 なんとも微妙で地味な作品。 

『星籠の海 上・下』

 「御手洗潔シリーズ」。 今回の舞台は瀬戸内、鞆。 村上や忽那水軍、幕末の国難、現代のカルト教団などなど、時間もテーマも縦横に横断するエンタメ作品。 映画化前提に書かれたものらしい(解説より)。
 いつもよりも読みやすかったが、いつもよりエンタメ感が強く、違和感も強かった。架空ではあるが歴史ミステリーの謎解きを絡めたところが面白く感じた。一方で、カルト教団に妙に執着する御手洗の態度が謎だった(『ネジ式ザゼツキー』以降を読んでいないせいか)。 これまでの様な本格推理小説というよりも、エンタメ小説として読んだ方が楽しめるか…。

『ディファレンス・エンジン 上』
 名作と名高い作品。 が、個人的にはイマイチぴんと来ない作品。 上巻のみで下巻をまだ読んでいないのは、そのため。 下巻を読み終えれば、また違った感想になるのかもしれないが、今は下巻に手が伸びない。

『恐るべき子供たち』
(岩波文庫版)
 「アンファン・テリブル」。 子供の世界の無邪気な残酷さを、悲劇的に描く。 個人的には、一部の方が好き。

『11人いる』
 SF漫画。 試験の最終テスト、受験生は10人のはずが、会場には11人の受験生が。ニセモノは誰だ。
 萩尾さんの代表作の一つ。 偽者を探るミステリー要素あり、反目と友情という少年漫画の王道ありと、非常に面白い作品。今回は漫画文庫版で手に入れたので、表題作の他、後日談である「続・11人いる」、「スペース・ストリート」の二編も併録。主人公とパートナーのその後も見れて、お得。

『九月病 下』
 シギサワカヤさんの『ファムファタル』が好きで、探している途中で見つけて購入してみた作品。 上巻は見当たらず、下巻から読むという暴挙に出るw 面白かったですけど、やはり上巻も読みたいところ。 『ファムファタル』もだいぶ前に読んだきりだったので、読みたいのだが3巻が見当たらない…。 通販すればいいのだけどメンドイ…。


 今回はこんなところです。
 少し前に、漫画版で『冷たい校舎の時はとまる』を久々に読んだら、キングの『ランゴリアーズ』が読みたくなり買い、その後同じく読みたくなって富樫義博『レベルE』を買ったところ。
 『レベルE』は漫画文庫で買い直し。 『レベルE』のいい感じでぶっ飛んでるところが最高。 一連のルナとの話が好き。 作中の他の話の中で「ランゴリアーズ事件」モチーフの話が登場する。
 なお、辻村美月、S. キング、富樫義博と、共通点のなさそうな作家三人の作品の共通点が「ランゴリアーズ事件」。

 『レベルE』の「E」は、「エイリアン」の頭文字の「E」から採った。だが、ご存知のように「エイリアン」のスペルは「alien」である。というコメディの様な富樫と編集さんとのやり取りが、ジャンプブックス版のあとがきのようなところにあった記憶が。

 それではまた次回。

早瀬耕  『グリフォンズ・ガーデン』他感想…

 新刊の刊行タイミングと、読書スピードの都合からまた遅くなりましたが、今回の分の紹介と感想です。


新刊
・早瀬耕    『グリフォンズ・ガーデン』          ☆4
・長沢樹    『リップステイン』               ☆3.5
・宮部みゆき  『あやかし草子 三島屋変調百物語 五之続』  ☆4.5

コミックス
・赤坂アカ  『かぐや様は告らせたい 9』         ☆4
・紙魚丸   『惰性67パーセント 4』            ☆3.5


既刊
・ラメズ・ナム    『ネクサス 上・下』           ☆4
・津原泰水     『11』                    ☆4
・藤木稟    『ラプラスの悪魔 バチカン奇跡調査官』  ☆3.5
・早見和真     『イノセント・デイズ』           ☆4
・貫井徳郎     『慟哭』                   ☆4
・内藤了      『MIX』                    ☆3
・笹本祐一     『放課後地球防衛軍 1』        ☆3.5   
・神林長平     『機械たちの時間』            ☆3



感想
『グリフォンズ・ガーデン』
 前回『未必のマクベス』を紹介した時に、非常に楽しみだと書いたが、楽しみにしていた甲斐はあった。
 作品としては、『プラネタリウムの外側』の時系列に属する物語。時間的には、過去の物語。『プラネタリウム』が、どちらかというと思弁的、哲学寄りなSF作品だったが、今作はより純粋にSF要素の強い作品だった。早瀬耕という作者さんらしさが、随所にみられる面白い作品だった。『プラネタリウム』の前日譚ではあるが、直接の繋がりはほぼないため、この作品から読んでも大丈夫。
 おススメ。

『リップステイン』

 続発する連続暴行事件を追う、ミステリー作品。 複数の登場人物の視点を交えて事件を描き出す手法で書かれており、サスペンスフルな雰囲気を演出していて面白い。
 ただ、ファンタジックな要素が混ざっているので好き嫌いは分かれそうな作品。ミステリー作品としては面白い。

『あやかし草子』

 こちらも楽しみにしていた、「三島屋変調百物語シリーズ」の最新刊。 背筋が寒くなる怖い話から、ほっこりする人情話まで、幅広く揃っている。
 「開けずの間」人間の業の深さにぞっとする話「だんまり姫」は、言葉を喋らない姫の謎を追っていくうちに登場するとある人物の器の大きさに圧倒される。感動の話「あやかし草子」では、ようやくおちかにも変化が。
 これまで語られてきた語りを通してお近の中に積もって来たものが、彼女の心の底に凝ったものを溶かしたよう。これにて第一部完とのことですが、今後も続くとうれしい。

『かぐや様~』

 石上回(運動会篇)。 恒例の藤原による白銀特訓回も。

『惰性67パーセント』
 いつも通りのゆる~い下ネタ系美大コメディ。 今巻は、新キャラが登場。

『ネクサス』
 「科学技術による人類の人工的な進化は許されるのか」をテーマにした、超人類・ポストヒューマンを巡る、サスペンスSF。
 現在可能な技術の先にある人類の進化を扱っている点が、興味深い。作中のアメリカと中国のポストヒューマンを巡る立場が、逆の様に感じるが、現在のアメリカの閉鎖的な雰囲気に対する皮肉だろうか。
 謀略モノ、SF、サスペンス。どう読もうが面白い物語になっているので、SF好きにはおススメ。三部作の一部目ということなので、続編が早く読みたいところ。

『11』
 『バレエ・メカニック』、『ブラバン』などで知られる津原泰水さんの短編集。
 とても面白い作品集。中でもやはり>「五色の舟」が素晴らしかった。 未来を予言するという妖怪「件(くだん)」を巡り交わされる悲喜交々を描く。

『ラプラスの悪魔』
 シリーズ第6弾。 今回は憑霊現象の謎を解く。安定の面白さ。

『イノセント・デイズ』
 女性確定死刑囚と、彼女の無罪を信じる友人たちの奮闘を描く。 控訴も再審請求もすることなく、粛々と死刑が執行されるのを待ち望む田中幸乃の、不可解な心情を様々な証言から追うサスペンスミステリー。
 世論・マスコミ報道の虚妄とは乖離した真実の田中幸乃の姿とは。 読後のやるせなさが凄い作品

『慟哭』
 連続幼女誘拐事件を追うミステリー。警察の捜査視点と、怪しい「私」の視点とを通して描かれる。
 捜査の鬼気迫る描写と、新興宗教にのめり込むなど徐々に怪しい動きを見せる「私」の動きと事件との関連が気になり、飽きない。タイトルの「慟哭」の理由が分かった時は、ぞくりとした

『MIX』
 シリーズ8弾。 相変わらずの微妙さ。 事件が薄いのか? 残虐性は事件の濃さとは無関係だろう。

『放課後地球防衛軍』

 『妖精作戦』の笹本さんの新シリーズ。 『妖精作戦』シリーズが好きな人は楽しめるはず。他シリーズは未読だが、笹本さんらしさが詰まっている作品だと思う。

『機械たちの時間』

 サイバーチック・ハードボイルドSF。 仮想と現実、認識・意識をテーマにした作品。 1995年の作品のせいか、若干古めかしさを感じる。
 TVアニメ版『攻殻機動隊』のどこかで、「機械たちの午後」という話があったがタイトルの元ネタはこれかな?


 今回の☆4以上の作品は、どれも面白く、お勧めです(コミックス除く)。
 それではまた次回。

米澤穂信  『真実の10メートル手前』他感想…

 今回の分の紹介と感想です。 またまた間が空いてしまい済みません(;´Д`)

新刊
・米澤穂信   『真実の10メートル手前』             ☆4
・櫛木理宇   『ホーンテッド・キャンパス 墓守は笑わない』 ☆3
・早瀬耕    『プラネタリウムの外側』              ☆4

ラノベ・コミックス
・丸戸史明   『冴えない彼女の育て方Memorial』       ☆4
・鏡貴也    『終わりのセラフ 16』               ☆4
・画・矢吹健太郎 『ダーリン・イン・ザ・フランキス 1』      ☆3.5

既刊

・八木圭一   『一千兆円の身代金』    ☆3
・辻堂ゆめ   『いなくなった私へ』      ☆3
・林譲治    『ウロボロスの波動』     ☆3.5
・笹本祐一   『カーニバル・ナイト』     ☆4
・――      『ラスト・レター』        ☆4
・早瀬耕    『未必のマクベス』       ☆4.5
・原田マハ   『楽園のカンヴァス』      ☆4
・市川拓司   『ねぇ、委員長』        ☆3.5
・大村友貴美  『霧の塔の殺人』       ☆2.5
・プリ―モ・レーヴィ 『天使の蝶』       ☆3.5


感想

『真実の10メートル手前』
 『さよなら妖精』、『王とサーカス』の太刀洗万智を主人公に据えた短編集。ジャーナリストとして真摯に事件に向かい合う彼女の姿勢には好感が持てますし、取材の過程で、事件が当初とは異なる様相を呈していく様も非常に面白い
 一方で、彼女の自罰的に過ぎる傾向には危うさを感じる。「ナイフを失われた思い出の中に」で、多少なりとも解消されていればいいのだが。なお、この話には『さよなら妖精』のマーヤの兄が登場。

『ホーンテッド・キャンパス』
 通常営業。帯は煽っていますが、特にいつもより怖いということはない。表題作でもある「墓守は笑わない」が、おススメ。

『プラネタリウムの外側』
 SF連作短編集。「有機素子コンピューター」により、失われた人との会話を再現する仕組みを考案した南雲助教授と、彼に依頼する人々を通して、仮想と現実、恋愛を描く。 表題作となる「プラネタリウムの外側」と、それに続く関連作(「忘却のワクチン」、「夢で会う人の領分」)がおススメ。

『冴えない彼女の育て方』

 発表済みの店舗特典SSを収録したファンブック。他にはキャラクター紹介、作者・絵師のインタビューなど。高校受験時のエピソードを語る書下ろし小説も併録。差し絵が完全に事後ですたい。

『終わりのセラフ』
 キ・ルク戦決着。蘇る変態と、新章。だんだんと謎が明かされていくのかな。

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』
 アニメ作品のコミカライズ作品とのこと。PVを見たら面白そうだったので購入。ロボットものだが面白い(個人的にはあまりロボットものは好きではない)。『グレンラガン』とかの人たちが関わっていた気が(記憶が曖昧)。

『一千兆円の身代金』
 社会派ミステリー。 インパクトは抜群だが、若干荒唐無稽な感も否めない。憂いはヒシヒシと伝わってくるが、犯人の思考は極端。誘拐事件(子供一人の誘拐)と身代金の額(憂国の部分)との落差がありすぎる。無差別テロ(国民全員が人質)と一千兆円ぐらいなら、つり合いがとれたのでは。 語り手を変えて、物語を様々な視点から語る手法は作品に合っていて面白さを増していた。

『いなくなった私へ』

 「死んだ記憶がないのに死んだことになっている」状況の謎を解くミステリー。作中に挿入されている「謎」の核心となるあるモノに関わる挿話は不要だと思った。それがなぜそうなのかを説明しないのなら、ただ邪魔なだけで、作品の雰囲気を乱している気がする。 ストーリーは奇抜で面白かっただけに残念。

『ウロボロスの波動』
 宇宙に進出した人類の宇宙開発の様子を物語るSF短編集。きちんとした説明もなくどんどん繰り出される用語に面食らうかもしれませんが、それさえ乗り越えれば楽しめる。仮に分からずとも楽しめるし、ストーリーに引き込まれる。

『カーニバル・ナイト』、『ラスト・レター』

 前回紹介したので、省略。実は『ラスト・レター』は前回の時点では読み終えていなかったのでした(*_*;
 非常に面白かったが、ラストシーンが…。

『未必のマクベス』
 『プラネタリウムの外側』が面白かったので前作を購入。最高。 犯罪小説にして恋愛小説。帯にある「読後、ただ立ち尽くした」、「本の形をしたラブレター」の文句は嘘ではなかった。 未読の方は是非。
 出向先の香港の会社で待ち受けていた陥穽に主人公と友人が立ち向かっていく様に手に汗を握り、胸を躍らせる。一方で通奏低音のように流れる忘れられぬ初恋の人への思いと、『マクベス』。綺麗に組み合わさって、結末へと向かう。終盤は一気に読まされる。

『楽園のカンヴァス』

 ルソー『夢』を巡る美術ミステリー。 作品の背景(時代、関係者)を丁寧に描き出すことで、面白味が増している。また、事実と虚構、過去と現在を交互に描き出す手法で、作品の真の姿が徐々に明らかにされていく手法が見事だった。
 美術に興味はなくとも、ミステリーとしても面白い作品。

『ねぇ、委員長』
 恋愛小説。短編二編と、表題作の中編一編の三編を収録。 不良と委員長のような、ギャップのある恋愛関係、壁のある恋愛模様を描く。 いずれも似た傾向の作品。

『霧の塔の殺人』
 以前紹介した『死墓島の殺人』に続く作品。 横溝的世界観の作品と言われていますが、特にそんな感じがしないのは、前作と同じ。 ミステリーとしては、唐突に解決された感。終盤まで新たな展開で広げて引っ張りながら、最後に一気にまとめた感じが。

『天使の蝶』
 自身の体験をもとにした『アウシュビッツは終わらない』で知られる作家の、科学知識を生かした幻想短編集。 毒というか、人間を冷徹に見通した言葉が魅力。科学の光だけではなく闇も描く。


 長くなりましたが、今回はこんなところです。
 『未必のマクベス』、『楽園のカンヴァス』がとても面白い。
 早瀬耕さんは、4月18日にデビュー作が復刊されるのでそちらも楽しみ。
プロフィール

ゆーいち

Author:ゆーいち
ゆーいちです。

このブログでは特にジャンルを絞らず、自分が読んだ作品の感想を書いていこうと思います。
記事中の作品についての評価は、おススメ度と見てください。

出来るだけ週一程度のペースで更新していきたいと思います。

よろしくお願いいますm(- -)m

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