野尻抱介 『太陽の簒奪者』 (ハヤカワJA)

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)
(2005/03/24)
野尻 抱介

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評価(☆5が満点)
☆3.5

あらすじ
 西暦2006年、突如水星から吹き上げられた大質量の鉱物資源は、やがて太陽をとりまくリングを形成した。不運にもそのリングは行動面に平行に形成されたため、地球の日照量は激減、人類は破滅の危機にさらされることになった。
 一体誰が何の目的でリングを創造したのか?
 異星文明への憧れと人類の救済との間で揺れる科学者、白石亜紀(しらいしあき)は宇宙艦に乗り、リング破壊ミッションに赴くが…。

感想
 中古100円にて発見したので購入してみましたw
 以前紹介した『ふわふわの泉』、『南極のピアピア動画』の作者さんの作品です。こちらの方が初期作品になるようです。

 上記の二作品は、きちっとしたまじめなSFの中に遊び要素というか、お楽しみ要素があるような感じだったのですが、今回は基本的に全編通してきちっとした作風でした。
 個人的にはもう少し肩の力を抜いた作風の作者さんなのかと思っていた(上記二作品のような)ので、ちょっと意外でした。まぁ、後書なんかを読んでいると堅い人なのかとは思っていましたが。


 作品としては、『アルマゲドン』のようなディザスタームービーテイストの作品です。
人類滅亡の危機に対処するべく旅立つ人たちの話です。焦点は基本的に白石亜紀という女性にあてられていますが。

 そしてそのディザスタームービーテイストの中に、「未知との遭遇」というテーマが込められていました。
 野尻さんの他の作品でも見られましたが、この人の宇宙人はわりと人類に無関心ですね。まぁ、『インディペンデンスデイ』とかのようなタイプの攻めてくる宇宙人でも困りますけどねw

 ところで、この作品の宇宙人を見て『天冥の標』のメイスン(ミスミィ)を連想したのは私だけでしょうか? まぁ、形は全く違いますし、性質も違うのですが、特徴は似ている気がしました。
 知的生命体は到達するだろうと予測されている一つの頂点なんですかね、彼らのような存在は。
 それに関連して、もう少しAIと意識、魂についての話を掘り下げてみて欲しかったかなと思いました。
 こちらは単純な興味です。


 他には、この作品が野尻さんのこれ以降の作品の基本型になっているような気がしました。
 ヒロインの造形、宇宙、異星人などなど…。
 別シリーズの『ロケットガール』の方は、その内に読むかもしれません。

野尻抱介『南極点のピアピア動画』 (ハヤカワ文庫JA)

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)
(2012/02/23)
野尻 抱介

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 日本の次期月探査計画にかかわっていた大学院生・蓮見省一(はすみしょういち)の夢は、彗星が月面に衝突した瞬間に潰え、追い打ちを駆けるように恋人の奈美(なみ)までもが自分の元から去っていった。一人残され、打ちひしがれた省一には、奈美への想いをボーカロイドの小隅レイに歌わせ、それをピアピア動画にアップロードすることぐらいしか思いつかなかった。
 そんな中、彗星の衝突によって巻き上げられた月からの放出物が、地球で双極ジェットを形成することが判明。それを利用し宇宙旅行を実現しようというプロジェクトを省一はピアピア動画技術部に立ちあげ、「宇宙男プロジェクト」が開始される。
他4編

感想
 不思議なタイトルに惹かれて購入。
 分かるとは思いますが、本書のタイトル及び内容は『ニコニコ動画』のもじりとなっています。本書の中「ピアピア動画」で実行されていることは、ほぼ現実の「ニコニコ動画」で出来ることと同じものだと思います。
 解説はドワンゴの社長が書いてますw

 収録作品は、表題作を合わせて4編あり、次のようになっています。
 ・「南極点のピアピア動画」
 ・「コンビニエンスなピアピア動画」
 ・「歌う潜水艦とピアピア動画」
 ・「星間文明とピアピア動画」



 個人的に好きな作品は、序盤の二編、「南極点のピアピア動画」、「コンビニエンスなピアピア動画」ですね。
 この作品全体に言えることですが、ちょっとした思いつきがあれよあれよという間にすごいところまでいってしまうところが面白く思えました。
 クモの巣(糸)が軌道エレベーターになるとか。

 ちょっと見、荒唐無稽なお話に見えると思いますが、読んでいるとそれほど気にはなりません。というよりもむしろ、実現してくれることを望んでいました。
 厳密な科学考証のようなものを求める方には受け入れがたいものかもしれませんが、この作品の面白さはこのどんでん返し、実現不可能にみえるものの実現にあるかと思います。

 もう一点、この作品の面白いところはなんと言っても「ニコニコ動画」をモチーフにしているところでしょうか。
 個人的にはたまに覘く程度のライトユーザーなので、「へーそんなこともできるんだ」と感心しながら読んでおりましたw ついでに言うと、ボカロも興味が無いので同じように感心しつつ読んでました。
 ですので、どこまで現実に即した記述になっているのかはわかりませんでしたが、少なくともこのお話は現実と同じ線上に展開されているんだろうなという感覚を得ることができました。


 後編の二編ですが、こちらは少し飛び過ぎていて「いやいや」と突っ込んでしまいましたw
 が、以前の作品『ふわふわの泉』を読んでみて思いましたが、この作者さん的には良くある展開なのでしょう。悪いと言う訳ではないのですが、前半の二つと後半の二つの経路の違いが気になったかなぁ。
 
 『ふわふわの泉』、長編作品ですが、読みやすく、かつ面白い作品でした。こちらもおススメです。
ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)
(2012/07/24)
野尻 抱介

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吉上亮『PSYCHO-PASS ASYLUM 2』 (ハヤカワ文庫 JA ヨ 4-5)

PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫 JA ヨ 4-5)PSYCHO-PASS ASYLUM 2 (ハヤカワ文庫 JA ヨ 4-5)
(2014/11/21)
吉上 亮

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 About a Girl
 常守朱(つねもりあかね)監視官が指揮する公安局刑事一課。六合塚弥生(くにづかやよい)監視官と同僚の分析官・唐之杜志恩(からのもりしおん)は、未成年妊婦を拉致・出産の後殺害する謎の集団【方舟】を捜索することに。その捜査の果て、六合塚は思いがけない人物との再会を果たす。
 別離
 宜野座伸元(ぎのざのぶちか)がアニマルセラピストによる「動物の再導入」事件を追う。事件の果てに宜野座が遭遇したもう一つの自分の姿とは?

感想
 感想を書くのが遅くなってしまいました(^_^;)
 アニメ本編はもうすぐ終わってしまいますね。劇場版を楽しみにしていましょう♪

 ということで、 『サイコパス』のスピンオフ作品ということで購入した作品です。
 以前紹介したものとは異なり、アニメ版一期以降の出来事を扱った作品です。宜野座さんの事件は、朱ちゃん加入以前の時系列のお話が中心ですが。


 六合塚さんの話では、アニメ本編でもちょろっとでてきたあの人のその後が描かれていました。六合塚さんが執行官になるきっかけともなった重要人物ですね。
 個人的にはもう日の目を見ることが無いだろうと思っていた人物だったので、もう一度スポットライトが当てられたことに驚きましたw
 そして作品内でも屈指の歪み方をした人間になっていました。
 事件が多少猟奇的なものですので、苦手な方は注意された方が良いかと思います。
 その他、アニメ本編ではあまり触れられていなかった場所、国境警備ドローンなどの描写もあります。

 宜野座さんの方は、彼っぽい事件でしたね。良くも悪くも。
 ガチガチの「アンチ潜在犯」が、少しだけ見方を変えるきっかけになった過去のある事件のお話です。こちらの事件もなんだか胸糞が悪い事件ですのでご注意を。
 先週のアニメ本編でも似たような描写(人間家具)がありましたが、こっちの方が性質が悪い気がします。



 個人的にはこうしたスピンオフ作品は、本編作品の雰囲気を壊しかねないものとしてあまり好きではないのですが、『サイコパス』のものに関しては本編を補完するもので、さらに単体の作品としても十分に楽しめる作品になっているかと思います。

 ちなみに、本作品のタイトルは『PSYCHO-PASS ASYLUM 2』となっていまして、もちろん「1」が存在しています。
 が、そちらの作品に収録されているストーリーが、チェ・グソンの過去編ということで興味が湧かず、購入していません。同時収録のもう一遍は、かがり君のお話なので気にはなるのですが…。
 まぁ、今後も買わないだろうなw

 二期の方もクライマックスを迎え、劇場版に向けての今後の展開が気になります。
 東金さんの運命やいかに。

伊藤計劃・円城塔 『屍者の帝国 』(河出文庫)

屍者の帝国 (河出文庫)屍者の帝国 (河出文庫)
(2014/11/06)
伊藤 計劃、円城 塔 他

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評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 屍者復活の技術が全欧に普及したた19世紀末、医学生ワトソンは大英帝国の諜報員にスカウトされ、アフガニスタンへの潜入任務を言い渡される。アフガニスタンの奥地でワトソンを待ちうけていたのは、潜入任務の目標、屍者の王国の王カラマーゾフだった。彼の渾身の依頼を受けたワトソンは、近年頻発している屍者が関わる事件の裏にいると言う最初の死者、ザ・ワンと「ヴィクターの手記」を追い求めて世界を駆けることに…。

感想
 非常に抑制された、恬淡とした文章でした。
 作中のとある趣向、屍者による口述筆記という形式をとっていると言う設定上仕方が無いのかもしれませんが、非常に淡々と進みます。
 屍者は、生者のような感情を持ち合わせていないと言う説明がされているので。
 そのせいか、物語自体がとても淡白な印象を与えてしまっています。なんと言うか、盛り上がりに欠けると言うと言い過ぎですが、もう少し感情というか、情緒的なものがあってもよかったのにと思います。


 ストーリーはあらすじに書いたとおり、世の中に屍者、すなわち「フランケンシュタインの怪物」があふれている世界設定となっています。 つまり、人間から死が奪われたと言うか、遠ざけられた状態の世界です。
 「死なない」のではなく、死んだ後も動き続ける感じです。
 「永遠の生を死に続ける」と説明されてました。個人的には「永遠の死を生き続ける」の方がしっくりきますが。

 そんな死人にあふれた世界で、屍者作成技術に関する陰謀を巡って、ワトソン氏の冒険が繰り広げられます。
 このワトソン氏、誰もが知るあのワトソンと「同一人物」ということになっています。
 名探偵の助手のワトソンです。
 元のワトソンもアフガン帰りということになっていますが、(というかネタ元がそうなっているので)冒険先もアフガンになったんでしょうね。まぁ、こっちのワトソンは日本にも行っていたりしましたが。


 作品としては、SF的なスパイ小説の雰囲気でしょうか。 諜報員ワトソンの活動記録です。
 スパイとはいっても「007」とか「MI」でのような雰囲気ではなく、トム・クランシー的な謀略もの寄り。アクションがない訳ではないけれども、頭脳戦がメイン。
 『虐殺器官』や『ハーモニー』のような、活動的な作品ではありません。作品としてはそれら前作のようなものを期待していたので、余計に淡々とした感じが強かったのかもしれません。



 プロットは伊藤さんが作ったそうですね。
 『虐殺器官』では言葉、『ハーモニー』では意識を取り上げていましたが、今回は死ですかね。最後まで読むと言葉なような気もしますが。

 円城さんには失礼になってしまいますが、やはり出来れば伊藤さんが書かれたものを読んでみたかったですね。
 「19世紀にイスラエルと出現させるにはどうしたらいいか?」とかを考えていたとか聞くと、そちらも読んでみたくなります。

 
 もちろん、面白くなかった訳ではありませんが、先にあげたような理由で盛り上がりに欠けるきらいがあった気がしますので、微妙な評価とさせてもらいます。

十三湊『C.S.T. 情報通信保安庁警備部 』(メディアワークス文庫)

C.S.T. 情報通信保安庁警備部 (メディアワークス文庫)C.S.T. 情報通信保安庁警備部 (メディアワークス文庫)
(2014/02/25)
十三湊

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評価(☆5が満点)
☆3.5

あらすじ
 脳とコンピューターを接続する技術【BMI】が一般化した世界。諸外国から熾烈なサイバー攻撃にさらされ、国家規模の大混乱に直面した日本政府は、事態の再来を防止するためサイバー空間の治安確保を目的とした組織『情報通信保安局』を設立した。
 ある日コンピューターウイルスによると見られる無差別大量殺人事件が発生する。自身の家族も事件に巻き込まれかけた保安局員、御崎蒼司(みさきそうじ)は局員として、家族として犯人逮捕に必死になっていた。一方で、優秀な同期でありながらもどこかアンバランスな同僚であり、長年の片思いの相手、伊江村織衣(いえむらおりえ)のことも気にかかっていた…。

感想
 SFものの皮を被った恋愛小説でしたw
 作者さん自身もあとがきで↑のことを言っていましたが。かと言って、SF部分がおざなりだったのかというとそんなこともなく、しっかりしたお話だったと思います。


 内容としては、近未来のサイバー警察小説といったところでしょうか。
 とはいっても、『攻殻機動隊』などの先行作品ほどには進んでいない、現在のちょっとした延長上にあるような世界観となっています。サイボーグやロボットなんかはいませんし、BMIという技術にしたところで、「電脳」ではなく、PCと脳を間接的に接続している感じです。

 あと『図書館戦争』に作品の雰囲気が似ているかなぁ。図書館とネット空間という違いはありますけどね。

 キャラクター造詣はわりと好みでしたかね。
 主人公が下ネタ星人すぎるところは狙い過ぎかと思いますが(^_^;) 独身の若い男=下ネタって、また安易なw
 メインヒロインはメンドクサさを除けば、とてもかわいい子だと思います。
 サブキャラ達もキャラ立ちしていて、彼らの掛け合いも面白かったです。

 恋愛要素自体は、そこまでベタベタなものではありません。
 主人公の片思いという設定上、もどかしい感じで終始一貫しています。へタレ君です。表紙だと強面で、強引なタイプの人間に見えるんですけどねwww
 
 

 難点を言えば、個人的にはラストの部分、一連の事件の犯人当ての部分があまり好きになれませんでしたね。
 犯人当て自体は別におかしな部分は感じませんでしたが、その後の犯人の行動が突飛というか…。言行が一致していない気がするんですよね。

 それに加えて、それまで前提としていた技術レベルを一気に飛び越した感じがします。
 犯人一人だけ別次元(いろんな意味で)w

 この少し突飛な展開さえなければ、ミステリーとしてももっと面白いと思えたんですけどね。この点だけが少し残念。


 続編では少し変な方向に走っている気がしますが、どうなるんでしょうか。個人的にはあまりそういった方向性に行って欲しくはないんですけども。
 普通に1巻のまま、あくまでSFに留まっていて欲しいです。
 主人公とヒロインの関係は、一巻の最後の時点からそれほど進んでいませんでした。『365歩のマーチ』な感じw

C.S.T. (2) 情報通信保安庁警備部 (メディアワークス文庫)C.S.T. (2) 情報通信保安庁警備部 (メディアワークス文庫)
(2014/10/25)
十三湊

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