井上真偽『恋と禁忌の述語論理』 (講談社ノベルス)

恋と禁忌の述語論理 (講談社ノベルス)恋と禁忌の述語論理 (講談社ノベルス)
(2015/01/08)
井上 真偽

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評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 大学生の森帖詠彦(もりじょう・えいひこ)は、天才数理論理学者の叔母・硯(すずり)のもとを訪ねる。アラサー独身美女であるところの硯に、探偵が解決した事件の真相を解決してもらうためだ。
 「毒入り手料理は故意か事故か」、「幽霊の証明による絞殺犯の特定は可能か」、「双子のどちらが犯人なのか」。
 それら詠彦が持ち込む問題を、硯は数理論理学で解き明かすことができるのか!?

感想
 「数理論理学」という一般にはなじみのない学問をミステリーに取り込んだ意欲作でした。
 馴染みが無いどころか、言葉自体寡聞にして聞いたことが無いものでしたので興味を持ったので購入。
 アラサー女子が探偵役というところも珍しい所でしたね。


 が、いかんせん一般的ではなさ過ぎるガジェットを使っているせいか本編の3分の1以上、下手をすると半分近くが「数理論理学」の思考方法の説明に割かれるという具合になっています。
 ヒロイン(?)であるところの硯さんによる講義形式をとっているので読みやすくはあるのですが、話のテンポがぶった切られている部分は否定できません。

 あと巻末に付録という形で数理論理学の理論の補足がされてはいるのですが、もう少し説明が欲しいところ。 2章、3章で出てきていた「論理計算」の式の読み方、見方についての説明はもう少しして欲しかった。どう見れば良いのかがイマイチ分かりませんでした。


 作品の構成としては、「探偵」が推理・解決した事件を、「最終探偵」wであるところの硯がダメ出しをして事件を読みなおすという形式になっています。
 こうした構成上、各事件を最初に推理する探偵はあて馬になっていますし、推理もミスリードにしかなり得ません。ですので、各章序盤の探偵の推理劇が魅力減です。

 まぁ、この辺りの事情はエピローグで明かされるのですが、その辺りは良かったと思います。意外性もありましたし。

 他の探偵の推理披露の後、満を持して硯が事件の真相を喝破する訳ですが、無駄に遠回りしているように思えます。
 普通に推理しても分かるような気がしてなりませんでした…。 事件自体のトリックはわりとオーソドックスでしたし、核心部分はワザと見逃されている感が…。


 あと、主人公の性格が謎。 統一されていないような感じを受けました。わりと躁鬱気味
 硯さんを賛美しすぎなきらいもあります。そのせいか数理論理学というものにも無批判に畏怖を感じていたり。ちょっと気味悪かったです。まぁ、ここら辺の理由はタイトルから推して測れますけども。

 そして時折、謎のネタを会話にませるのはどうかと。「禁則事項」って、ネタだとしたらだいぶ古いですよね? そしてメタ発言が多いのも気になりました。
 ちなみに硯さんのキャラクター自体は、わりと好きでした。



 ミステリー作品としてはそれほど魅力を感じませんでしたが、斬新な試みがされているところがよかったですね。数理論理学に少し興味が湧きました。
 その点で☆3です。抜きにすると☆2.5ぐらいですかね。

 硯さんは安楽椅子探偵をやめて、普通に現場で推理する形になれば面白いような気がしました。数理論理学のフィールドワークのような形式はどうでしょう。

相沢沙呼 『マツリカ・マジョルカ』角川書店

マツリカ・マジョルカマツリカ・マジョルカ
(2012/03/01)
相沢 沙呼

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評価(☆5が満点)
☆3.5

あらすじ
 柴山祐希(しばやまゆうき)は、学校に居場所を見つけられず、友達もおらず、冴えない学園生活を日々送っているだけの高校一年生。そんな彼の毎日は、学校近くの廃墟に住む女子、「マツリカ」との出会いで一変した。
 彼女から「柴犬」と呼ばれてパシリ扱いされることへの憤りと、彼女のクールな中にも漂う色香に高ぶってしまう男子高校生的なモヤモヤ感との狭間で揺れながら、どういう訳か学園の謎を解明するために奔走することに…。

感想
 別シリーズ作品、『午前零時のサンドリヨン』とはまた異なるテイストのミステリー作品でした。

 こちらの方のヒロイン、マツリカさんはドSでしたw
 廃墟に住んでいる(棲んでいる)わ、毒舌だわ、狙っているのか妙な色気はあるわで、主人公祐希くんの心を翻弄しておりました。
 祐希くん、高校生でこんな子にハマると人生狂うんじゃなかろうかと余計な心配までしてましたw

 一方、そんな祐希くんは祐希くんで、とてもいい味出している子でした。
 ヘタレで、ぼっち、さらにはムッツリ
 ザ・思春期な男の子でしたね。
 作者さんは、女性だと思われるのに、こうも見事に男子の、それも男子高校生の心理が描写出来ていることに驚きました。気になるよね、パ○チラwww



 さて、本編ですがこちらは『サンドリヨン』と同じく日常の謎を解くことをメインとしたミステリーです。
 こちらは主人公たちが通う学園で囁かれている噂を基として、その噂の奥に潜む謎、真相を探る形になっています。このてんで、手品のトリックを基にした『サンドリヨン』とは異なった感じになっています。

※※注意して欲しいのは、都市伝説的な噂の真相を探るというようなB級番組(たけしの年末特番的なw)のようなものではありません※※

 学園内で「噂」という形に姿を変えて伝わって来る、いじめなどの出来事や事件、事故。そういったものを探るという形です。
 もっとも人死には描かれない作品であることは変わらないのですが。


 さて、続巻である『マツリカ・マハリタ』も同時に購入したのですが、このシリーズは二巻で終わりにするのでしょうか?
 雰囲気的には完結した感じもするのですが、もう少し彼らの話を読んでみたいんですよね。
 
 『サンドリヨン』の続巻である、『ロートケプシェンこっちにおいで』が1月29日に文庫で発売されるそうです。
 なぜわざわざ書いたかというと、最近紹介した時に買ったのは当然単行本。それから一カ月足らずで文庫が…orz
 まぁ、面白かったからよかったんですけどね。あっちの不器用カップルの行方も気になりますし、続巻の刊行も楽しみです。

 にしても、文庫、どうしよう…。

マツリカ・マハリタ (単行本)マツリカ・マハリタ (単行本)
(2013/08/31)
相沢 沙呼

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七尾与史『ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件』 (幻冬舎文庫)

ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件 (幻冬舎文庫)ドS刑事 朱に交われば赤くなる殺人事件 (幻冬舎文庫)
(2013/08/01)
七尾 与史

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評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 人気クイズ番組のクイズ王が、喉を切り裂かれて殺害された。黒井マヤは相棒の代官山、本庁のキャリア組の浜田学(はまだまなぶ)とともに捜査を始め、もう一人の有名クイズ王・阿南(あなん)の元部下である伊勢谷(いせや)を重要な容疑者として狙いを付ける。しかしその矢先、伊勢谷は喉を切られて殺害された自身の母親を残し失踪してしまう。彼女の自宅には、カルト教団の祭壇がおかれていて…。

感想
 新キャラ登場で、ますますドSぶりに磨きがかかったマヤ様でした。
 マヤのドSな言動に歯磨きが掛かっていましたが、猟奇趣味の方は大人し目でした。

 代官山君は、相変わらずのワトソンぶりと振り回されぶりでした。
 今回は振り回された揚句、本庁へと出向ですw

 新キャラさんの浜田はキャリアであり、マヤの上司でもあり、なおかつドМという濃いキャラでした。
 とは言え、浜田は代官山とマヤさまとの三角関係などに発展するでもなく、しれっとした登場。現場では大体ゲ○を吐いているところぐらいしか印象に残っていませんw
 まぁ終盤で見せ場がありましたが。


 今回は「朱に交われば赤くなる殺人事件」ということでした。
 前回しかり、今回はどんな仕掛けで楽しませてくれるのかと楽しみにしていたところですが、今回はそんなに印象的なものではありませんでした。
 というか、仕掛けの現実味が薄く感じたからでしょうか。
 もちろんきちんとした裏付け、理論はあるのでしょうが、どうも「トンデモ」な感じがしていけませんでした。多少なりとも誇張されているんでしょうが、現実にああなり得るのか疑問に感じました。
 その点で、ちょっと引っかかりを覚えました。


 それ以外に印象に残ったのは、作品内に作者本人が登場したことでしょうか。しかも歯科医師。
 ストーリーにもしっかりと絡んでるしw

 「カルト教団」とかが出てきたときはどうなる事かと思いましたが、暴走というか迷走することなくきちんとまとまっていたのはさすがだなと思いました。
 次巻はどうしようか迷い中です。

相沢沙呼『ロートケプシェン、こっちにおいで』

ロートケプシェン、こっちにおいでロートケプシェン、こっちにおいで
(2011/11/19)
相沢 沙呼

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評価(☆5が満点)
☆4


あらすじ
 やっと酉乃(とりの)の本心を受け止めることができたと思ったクリスマスのあの日。勢いと雰囲気の力を借りて告白した僕は、なんと彼女の返事はおろか、連絡先さえ聞き忘れたまま冬休みに突入してしまった。
 「もしかして迷惑だった?」そう考えてしまい悶々と過ごす僕に、新年早々織田さんたちからのカラオケの誘いがかかる。そこで起こったちょっとした事件の謎を解くべく、ボクは『サンドリヨン』へ向かったのだが…。

感想
 やっと買えました(*_*)
 近所の本屋さんにはなくて、ちょっと出かけた時に立ち寄った書店で発見して購入。

 相沢さんの作品はちょくちょく読ませてもらいましたが、やっぱり「酉乃さんシリーズ」が好きです。
 文体のみずみずしさがちょうど作品世界にマッチしていますし、文章の読みやすさとテンポがすごくいい。他の作品も同じ感じはするのですが、こっちは作品の雰囲気にマッチしている感がより強い気がします。

 相沢さんは高校生を描くのがすごく上手な気がします。『ココロファインダ』とかでも思いましたが。
 ぶきっちょな酉乃さんは可愛いし、八反丸さんのツンデレっぷり(?)も好きですね。
 須川くんのへたれっぷりにも好感が持てますw
 登場人物たちのキャラクターが素晴らしいのも、この作品が好きな理由の一つです。読んでいて楽しいですし、次に彼らがどんなことを言い出すのかが気になります。

 特に今作は須川くんと酉乃さんのもどかしい恋愛模様を遠くから優しく見守りつつ、謎を楽しむことができました♪
 そりゃ帯にも「須川くんの『なかなか』進まない恋の行方も必見」とかって書かれますよw
 このもどかしい感じ、嫌いじゃないです。



 作品としては、今回もマジックのトリックの手法に因んだ短編連作集という形です。個々の独立した事件、話題が最後に綺麗に繋がって一つの結末を導くと言う大きな流れは前作を踏襲しています。

 手品に関する蘊蓄やあれこれは、今回も健在です。
 手品の手法をトリックに活かしているのも、このシーリーズの特徴ですね。そこも面白い点です。


 数ある学園ミステリー作品の中でも、高校生という多感な時期の姿を見事に描き出しているすばらしい作品だと思います。また無理のなりトリック、舞台設定と、作品自体が綺麗に整っているところもいいですね。

 学園ミステリーがお好きな方には是非一読をお勧めします

七菜なな『心理学者こころ女史の分析 卒業論文と4つの事件」 (富士見L文庫)

心理学者こころ女史の分析 卒業論文と4つの事件 (富士見L文庫)心理学者こころ女史の分析 卒業論文と4つの事件 (富士見L文庫)
(2014/11/13)
七菜 なな

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評価(☆5が満点)
☆2.5

あらすじ
 「――キミ、本当にバカだね」
 大学三年生の柊正宗(ひいらぎまさむね)が大学の卒業論文保管庫で出会ったのは、変人の院生で心理学研究室助手の天童こころ(てんどうこころ)だった。わずかな手掛かりだけで正宗の探し物を言い当てる観察力と分析力を持つ彼女。
 正宗は、こころの世話係兼お目付け役を心理学教室の教授からいいつけられる。ゼミ幹にも任命された正宗は、同じゼミに所属するメンバーたちが絡んだ奇妙な事件に巻き込まれることに…。

感想
 「――キミ、本当にバカだね」の台詞に惹かれて購入w
 が、予想していたのと少し違いました。

 というか、色々広告倒れなのでは?
 「心理学フィールドワークミステリー」と銘打たれていながら、心理学的なものはあまり見れらず。フィールドワークも別にしていないし。
 「卒業論文と4つの事件」とありながら、卒業論文はとってつけたような扱い。
 あ、ヒロインさんはちゃんと辛辣口調で扱いづらいキャラでしたw


 個人的に最もいただけなかったのは、主人公ですね。
 性格が個人的に合いませんでした。
 「おせっかい」、「正義感ぶっている」。それだけならまだしも、それらに自覚的であることが手に負えないですね。
 単なる善意の押し売りじゃないのかと。しかも「余計なお世話」というと燃える手合い。

 もう一点、ゼミ幹としてゼミの進行を仕切るのはまだいいとして、他の同級生の論文制作にまで発言・支持するとか。しかも院生でもなく学部の3年…。
 他人の論文のダメ出しなんて、学部生に出来るのか? そもそもお前、自分の論文はどうなんだよw

 等、主人公君のキャラ設定には色々不満がありました。


 肝心の謎解きですが、普通でした。
 心理学的な知識を基にして推理するのかと思いきや、先に書いたとおり別にそんなことも無い。フィールドワークは、主人公がノコノコ他人の行動を観察する程度。
 期待していた心理学的な、認知的な盲点を突いた読者の目を明かすようなトリックなどもありませんでした。推理自体にもそうした知見を含めたものではありません。

 ヤンデレの話、BLが絡む話、めんどくさい女(こころ)、めんどくさい男(正宗)の4編でお届けされています。
 BLの話の時、あの夜正宗には何があったんですかね(アッー

 キャラクターミステリーとしてはもう一つ、弱いお話だったかと思います。
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