上田早夕里『華竜の宮』 (ハヤカワ文庫JA)

華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)
(2012/11/09)
上田 早夕里

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 またまたSFですw

評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 ホットプルームの上昇による海底隆起により、陸地の大部分が海に沈んだ25世紀の地球。
 人類は未曽有の危機を辛くも乗り越え、激変した地上に適応して安定を取り戻した。地上に残った人類、陸上民は、僅かに残された土地と海上都市を中心に高度な情報社会を維持していた。他方海に適応するため遺伝子改造された人類、海上民は〈魚舟うおぶね〉と呼ばれる生物船を用いて、海上で自給自足の生活を営んでいた。
 外交官、青澄誠司(あおずみせいじ)は、狭くなった地球で人類が共存していくために日々様々な組織との交渉をこなしていた。そんな日々のなかで、もたらされたいつもと変わらない海上民との折衝のなかでツキソメという名の不思議な海上民の女性と出会う。そして彼女との出会いが、彼と人類をさらなる過酷な運命の変調へと導く。

感想
 純粋なSFでありながら、外交官の物語でもあるという面白い本でした。
 プロローグと終盤からエピローグにかけてがSF色が強く、中盤というか本編は「外交官青澄」といった感じが強いです。
 またプロローグが現代(2017)を舞台にしているので、物語の中心となる25世紀がさほど遠く感じないようになっています。書き出しから引き込まれました。

 また本作は、最新の地球惑星科学の理論を基にした世界観を持っているので、そこもいい意味でのリアリティの醸成に一役買っています。
 プルームテクトニクスとかプレートテクトニクスだとか、大学時代の講義を思い出しますねw とは言え、分かりやすさと読みやすさを作者さんが意識されているので、決して難しいことはなく、前知識が無くとも理解できるかと思います。


 作品は陸上民である青澄、海上民であるツキソメの二人の視点を交互に置いて書かれています。陸上から見た海上、海上から見た陸上という二つの視点から世界を見ることになります。
 また青澄の視点は、彼に付けられているアシスタント知性:マキによる一人称で語れています。ぱっと見は三人称の文体ですが。
 これも面白いですね。 最後の展開を考えると、色々ありそうですw


 個人的にはもっとSF的な背景、世界設定が気になるところです。
 魚舟とか、それから派生した獣舟とか。
 この時代の遺伝子改良技術とか。人間を完全に別の生物に作り替える技術があるとか、興味が尽きません。
 袋人とか。そうしたものが生み出された当時の時代のことも描いて欲しいですね。
 本書の越末に向かう数十年間のお話は、別作品として発表されているようなのでそちらは見てみようかと思います。
 

 本作品の終わり方は珍しいような気がしますが、どうなんでしょうか?
 管理人は判断しかねるので、「へぇ~こう言う終わりなんだぁ」と思いましたがw
 賛否はありそうですけどね。
 本書のテーマを考えた時、個人的には以外にありなのではないかと思います。

 印象に残ったのは、終盤の青澄の上司である桂大使のあるセリフです。
 すべてを受け入れてもなお進もうとする、桂大使の人間性が現れているいいセリフだと思いました。
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