伊藤計劃『ハーモニー 』(ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
(2010/12/08)
伊藤 計劃

商品詳細を見る


 『スワロウテイル人工少女販売処』を読んで、SF作品を読みたくなり購入。
 ひとまず有名どころからということで、伊藤計劃さんの『ハーモニー』です。

評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 21世紀前半、〈大災渦〉と呼ばれる世界的な大混乱を経て、人類は新しい社会形態、大規模福利厚生社会を作り上げていた。医療分子研究の進展によって人間社会から、殆どの病気、風邪までもが駆逐され、人間同士の想いやり、優しさ、倫理観が広がり、理想社会=ユートピアが実現していた。
 しかしそんな社会に蔓延るやさしさや思いやりを、見せかけにすぎないと考え、そんな社会で生きていくことに産んだ三人の少女は、餓死による自死を決行した。それは自死こそが、唯一許された自己表現だったから。
 事件から13年後、死ねなかった少女:霧慧トァン(きりえとぁん)は、突如として世界を覆い始めた大混乱の影に13年前に死んだ少女の影を見る。

感想
 面白かったです。
 
 ただ管理人は失敗しておりまして、先に前作である『虐殺器官』を読んでいなかったのです。
 読んでおくべきだった気がします(^_^;)
 もちろん今作『ハーモニー』単体でも十分楽しめますし、一冊で完成していますが、より深く楽しめたのではないかと。皆様は注意を。


 理想的な社会、ユートピア。
 聞いていると素晴らしい気がしますけど、やっぱりどこか胡散臭いですよね。餅に描いた絵というか…。
 今作では、そんなユートピアがある程度実現された世界でのお話となります。ある程度というのは、政治対立によって達成されていない地域が各地にのこされているためです。

 人間はみんな5歳を迎えると、体内に医療分子を入れ、常に体内をモニタリングすることで病気から免れています。それにより人間は老衰以外で死ぬことがほとんど無くなり、争いが無くなった社会となっています。
 生老病死の四苦の内、病とそれに伴って生も駆逐した形でしょうか。生きることが苦しみではない社会ですし。

 でもこれってよく考えるととても怖い気がしますけどね。 24時間常に監視されているとも言えますし。
 ユートピアに見せかけたただのディストピアですねぇ。
 そこに気付いたのが、主人公のトァンたち少女ということになります。主犯というか、気付きを与えたのは「死んでしまった」ミァハですが。

 京極夏彦『ルー・ガルー』、アニメ『PSYCHO; PASS』なんかの社会制度を思い出しました。
 理想的な管理社会。見せかけの平和。
 現実世界もその内そうなったりしそうで嫌ですねwもうなりかけているとも言えますが。


 そう言えば、この作品には大掛かりな仕掛けが施されています。
 本作品の結末に関わるものですので書きませんが、芸の細かさにびっくりです。
 ただ、個人的には本作品の結末は無いと思っています。非合理性と合理性が同居するのが人間、生命であると思うので、合理性のみになった場合、人間として、生命として在り続けられるのかと。


 伊藤さんの他の作品も読んでみようかと思います。
 伊藤さんが夭折されていなかったら、今はどんな作品を書かれていたのでしょうか。それも気になりました。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
カテゴリ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR