感想2 

 こちらは、小説編です。

新刊
・黒石迩守         『ヒュレーの海』              ☆2.5
・米澤穂信         『いまさら翼といわれても』(単行本)  ☆4

既刊
・菜摘ひかる        『風俗嬢菜摘ひかるの性的冒険』    ☆3
・尾崎翠           『第七官界彷徨』              ☆3
・天祢涼           『キョウカンカク 美しき夜に』       ☆3.5
・東川篤哉         『館島』                    ☆3.5
・森岡浩之         『星界の紋章 Ⅰ~Ⅲ』           ☆4.5
・――            『星界の戦旗 Ⅰ~Ⅴ』           ☆4.5
・二階堂奥歯        『八本脚の蝶』(単行本)          ☆4.5

・ヴァン・ダイン       『グリーン家殺人事件』           ☆4
・ラディゲ          『肉体の悪魔』                 ☆4


感想

『ヒュレーの海』
 第4回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作品。
 混沌が世界を覆って社会が崩壊、人類は過去の文明の技術を「発掘」し、何とか延命している世界。発掘屋のヴェイとフィは、偶然発見した過去の世界の海の映像に魅かれ海を探すことにした。

 というのがあらすじですが、二人が海を捜しに出かける所までは面白かった。それ以後は、読んでいてそれほど楽しめなかった。特に分裂気味の男が登場して以降は苦痛……。あらすじでワクワクして想像したような展開にならずに残念。 帯には『グラン・ヴァカンス』が引き合いに出されていましたが、らしさをちっとも感じない。
 あと、個人的に気になったのが、ルビの多用。しかも独自語をせっかく作っているのにそれに英単語のルビを充てるとか、もったいない気がした。このせいで無駄に読みづらい。 さらに時折挟まれるサブカルネタというかギャグが全く面白くないこと(小川さんの選評にもある)。


『いまさら翼といわれても』
 古典部シリーズの最新刊。と言っても、既に発表されたものをまとめたもの。 内容は、表題作も含めた6つの中短編集。 
 個人的には、摩耶花メインの「私たちの伝説の一冊」、えるメインの「いまさら翼といわれても」の二編がおススメ。どちらも「呪縛からの解放」であるように見えて、読後感の異なる作品。摩耶花は、素直に漫研から開放されてよかったと思う。手引きしてくれたのが意外な人だったけれども。えるの場合は、タイトルからもわかる通りこれからどうするか、どうしたいのか悩ましいところ。今度の謎はちょっとやそっとじゃ解けません


『風俗嬢菜摘ヒカル~』
 AV女優でもあった故・菜摘ヒカルの自伝的、風俗世界体験レポート作品。単にセ○クスが大好きだから風俗にという訳だけでもなく、それはそれとしてきちんと思うところがあって仕事をしているのが伝わってくる。風俗業界の裏側ものぞける作品としても面白い。
 実はこれ、『桜庭一樹の読書日記』にちょっとだけ登場していて、たまたま発見したので購入したもの。普通に読み物としても面白かったので、購入してよかった本。


『第七官界彷徨』
 こちらも『桜庭一樹の読書日記』で取り上げられていて購入したもの。
 人間の五官と六感を超えた第七官に訴えかけるような詩を書きたいと願う少女の、探索と恋の物語。 肥しの匂いを充満させる一助、精神医学生の二助、ろくでなし音楽学生の三五郎との共同生活のドタバタ劇がおもしろい。が、熱心に紹介されていたほどの面白さは感じられなかった。それは多分、私が乙女心を持った少女ではないからです。


『キョウカンカク~』
 ミステリー作品。タイトルの通り、「声を見る」共感覚を持った探偵が主人公という一風変わった作品。声で犯人が分かる、分かってしまうので、必然的に作品のメインはホワイダニット(犯行動機を追及する)。
 探偵の特異的な部分を除けば、本編は正統派の推理もので楽しめる。推理展開にも無理はなく、探偵の特異さも浮くことなく上手にまとめられていて楽しめた。続編があるようなので、そちらも探してみたい。


『館島』
 内容は、クローズドサークル状態(外部からの介入が容易ではない状況)でのイワクありな館での連続殺人事件と王道の本格作品。ユーモアミステリーで有名な著者だけあって、登場人物たちの掛け合いはユーモアに描かれていて、面白い。が、大仕掛けのトリックの大胆さと、推理の精緻さは流石の仕上がり。
 ところで続編はどうなっているのでしょうか、K島さん! 因みにこれも『桜庭一樹~』の紹介w


『星界の紋章』、『星界の戦旗』
 精緻に構築されたSF世界での冒険譚、所謂スペースオペラ作品。特に『星界の紋章』は、主人公のジントとヒロインのラフィールの出会いに始まる、未知の世界での二人の冒険がメインに描かれており、冒険譚としてだけではなく、ボーイミーツガールものとしても非常に面白い。 『星界の戦旗』は、『星界の紋章』の後を受けた作品で、ジントとラフィールをメインに据えたまま、舞台をより大きく拡大したもの。戦争という大きな世界の流れの中で二人と世界の物語を描き出す。
 余談ですが、独自言語とルビを多用するなら『ヒュレーの海』はこの作品ぐらいやるべきだったと思う。


『八本脚の蝶』
 「圧倒的な感性。驚くべき思考の世界。才知の煌めきで多くの人に鮮烈な印象を残し、25歳でこの世を去った、ある女性編集者の心の記録」(帯より)。
 素敵で、詩的で、死的な本。帯の文句に偽りなしだと思います。夭折が惜しまれる。 小説ではなく、ブログの記事をまとめた形の本になっています。 本好きな方にはお勧めです。


『グリーン家殺人事件』
 古典的名作ミステリー。 スキのないプロットは流石の一言。大仕掛けや奇想天外なトリックはないものの、読ませてくれます。
 個人的には、犯罪遺伝説は信じてはいないので、ファイロ・ヴァンスのそれに関しての発言のみ気になりました。


『肉体の悪魔』
 第一次大戦中、戦争により放縦と無力に陥った少年と人妻の恋愛悲劇を描いた作品。
 主人公の少年の、不倫の恋愛心理を見事に描き出した作品で、心理描写の細やかさが素晴らしく、作者が16-18歳でこれを書いたというからさらに驚き。最後に悲劇が待ち構えていると予感しつつ、不倫を悪徳と知りつつもやめられない恋愛に溺れていくさまが見事に描き出されている。
 ポルノ小説ではないので、その向き御所望の方はご注意を。
 おススメ小説。


 今回は豊作で、非常に充実した読書生活でした。 一方で、お財布は寂しくなりましたが…。
 ちなみにハヤカワSFコンテストのもう一つの優秀賞受賞作、『世界の終わりの壁際で』は、購入を迷い中。選評の評価は高いのですが、ソトーリーにあまり惹かれなかったので。どうしようかなぁ。

 今回の古典部シリーズの新作に加え、なんと小市民シリーズも再開されるようですね。米澤さん、頑張ってください! 小鳩君と小山内さんはかなり久々ですね。

 宮部みゆき『三鬼 三島屋変調百物語』が12月10日に発売だそうで、そちらが楽しみです。
 寒いので、炬燵でじっくり読書が至福ですねぇ~(*'▽')
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