長谷敏司 『あなたのための物語』 (ハヤカワ文庫JA)

あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)
(2011/06/10)
長谷 敏司

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 西暦2083年。人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、ITPテキストで記述される仮想人格『wanna be』を用いた実験に心血を注いでいた。『wanna be』に小説を執筆させることによって、使用者が創造性をも兼ね備えることが可能であるということの証明を試みていた。
 そんな折、サマンサの余命があと半年であることが判明する。彼女はのこされた日々をITP商品化の最大の壁である「平板化問題」の解決に捧げようと決心する。一方で、『wanna be』は徐々に彼女のための物語を綴り始める…。

感想
 不思議な感じの作品でした。

 全体的にこれでもかと言わんばかりにSF要素がちりばめられ、作品を彩っているのに、作品はSF作品というよりも、純文学作品のような雰囲気を持っていました。
 死に向かう人間の心的葛藤、人間と機械の相克。
 そうしたあれやこれやが詰め込まれた作品のように思いました。 
 SFでありながら、どこまでも人間の存在を描いた作品ではないかと思います。


 AI人工人格の作成など、SFとしても面白いテーマを扱っていて、そちらの面でも楽しめました。 科学的考察というか、理論的な部分でもきちんと掘り下げられていて、作品内での議論も楽しめます。

 また、死に向かっていくサマンサの心理描写などもしっかり書かれていて、そちらの面でも良い作品でした。
 着実にそして不可避的に死へと向かっていくサマンサの、死への恐怖周囲との軋轢気付き、そうした部分もきちんと描写されています。
 タイトルの『あなたのための物語』というのも、この辺に理由があるのでしょう。
 作者さんが逃げていないです。 
  


 長谷さんの他の作品にも手を出して見ようかなと思えた作品でした。
 あらすじを見る限りだと、『Beatless』(だったかな?)がおもしろそうでしたが、近くの書店に見当たらぬ…。 ライトノベル作品の方は、個人的には好きになれなかったんだけど…。
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