乾緑郎 『機功のイヴ』 他感想…

 それでは今回の分の紹介です。

新刊
・乾緑郎      『機功のイヴ』        ☆4
・森博嗣      『サイタ×サイタ』      ☆3.5
(ラノベ)
・葵せきな     『ゲーマーズ DLC』     ☆4


既刊
・泡坂妻夫     『乱れからくり』        ☆4
・森博嗣       『カクレカラクリ』        ☆3.5
・中田永一     『百瀬、こっちを向いて』   ☆3
・北森鴻      『凶笑面』            ☆4
・――        『触身仏』            ☆4
・――        『写楽・考』           ☆4
・――        『邪馬台』            ☆4
・――        『天鬼越』            ☆4


感想

『機功のイヴ』
 SF・伝奇作品。 江戸時代に似た架空の世界を舞台にした、オーバーテクノロジーの結晶であるアンドロイド・イヴを巡る物語。
 時代小説とロボットという異色の組み合わせながら、とても面白い物語に仕上がっていた。スチームパンクものに雰囲気は近いかも(歴史のIF的なものを扱っているという意味では)。
 話としては、イヴの存在の謎を巡ってのアレコレの話です。終盤(最後の二編)は話が大きくなってしまってイマイチでした。前半のようなスタイルで通してほしかった。決して面白くないわけではないのだが、唐突な感じが否めなかった。
 イヴが非常に人間臭くて可愛い。2話以降登場することになる箱への愛着とか。『攻殻機動隊』のシャチョーを思い出したり。


『サイタ×サイタ』
 「Xシリーズ」の最新刊(文庫化の)。 小川たちのもとに舞い込んだ依頼人・目的不明の素行調査と、巷を騒がせる連続爆破事件との関連性とは。
 今回も(だったかな?)登場の真鍋君の同級生、永田さんがいい味出してます。あの絶妙なおとぼけキャラが素敵。というか、このシリーズのキャラクターたちの掛け合いは面白い。推理ものとしては弱いですが、作品としては楽しめるこのシリーズ。

『ゲーマーズ DLC』
 今回は、番外編。本編とは違うところでせっせとフラグを立てる主人公のお話(笑)。 『今巻のクリア報酬は、主人公専用装備「大型地雷」』(折り返しの作者コメント)。
 外伝ということで新キャラが登場しています。外伝でもすれ違い錯綜コメディを展開していて、最高です。本編とどう絡んでいくのかはまだわかりませんが、続きも気になるところです。外伝は、本編5~7巻当たりの裏側という時間設定の模様。

『乱れからくり』

 ミステリー作品。ねじ屋敷の主馬割家、奇禍が相次ぐ彼らにいったい何が起きているのか。馬割家に秘められた謎とは何か。
 タイトルの通り、作中にちりばめられたからくりの数々(ミステリーとしての仕掛けも含め)を楽しめる作品。ただ、終盤の大時代が買った趣向は人によって好みが分かれるかもしれません。
 個人的には、最後に明らかになった事件全体の構造が好きでした。京極夏彦『絡新婦の理』のような、ああいった構想の事件物が好きです。

『カクレカラクリ』

 こちらも絡繰りをモチーフにした作品。タイトルからすると↑に触発された部分もあるのかしらん。
 村内に隠されたという天才絡繰り師の手にによる絡繰り。その仕掛けが今年動き出すというのだが、その詳細は誰も知らない。「カクレカラクリ」の所在と制作目的を探るべく、廃墟マニアの大学生と、彼らの同級生姉妹がその謎に挑む。
 こちらは、隠された絡繰りの所在を巡る謎を解くことがメイン。あと、裏表紙にもありますが、森作品には珍しい純粋な青春ミステリーとなっています。

『百瀬、こっちを向いて。』
 表題作が何年か前に話題になった作品。 恋愛短編小説集。表題作を含めて4編。
 個人的には、表題作よりも「キャベツ畑に彼の声」、「小梅が通る」の二編の方が好きだった。
 「キャベツ畑に彼の声」は、女子高生と覆面作家をしている国語教師の交流を描いた作品。じれったい恋の行方と結末がよかった。「小梅が通る」は、恵まれた容姿のゆえにチヤホヤされることが嫌で、普段はブスメイクをしている少女と、軽薄な少年との恋物語。
 表題作は、最終段落だけ読めばいいような気がする…。


『凶笑面』、『触身仏』、『写楽・考』、『邪馬台』、『天鬼越』

 北森鴻による「蓮丈那智フィールドファイル」と名付けられた伝奇シリーズ。民俗学をモチーフにしたミステリーシリーズ。
 『邪馬台』のみ長編作品で、他は短編集となっている。なお、作者の北森氏は連載途中で急逝されたため、『邪馬台』の途中からパートナーの浅野里紗子氏により書き継がれており、以降連名作品。
 いずれの作品も、民俗学的な謎解きとミステリー的な謎解きが併存しており、二つの切り口から作品を楽しめる。ただ、横溝作品のように民俗的な事象と事件とを融合させた事件であることは少ない(昔ながらの因習が~的な)。
 なお作中では、主人公・蓮杖那智による興味深い民俗学的見解が披露されているものの、所謂学会的な学説との整合性の如何は私の知識不足のため不明ですが、その発想の豊かさはとても興味を惹かれるものでした。
 星野さんの『宗像教授伝奇考』シリーズと似た雰囲気の作品です。

 ただ、読んでいて気になったのは作中での「民族」という語彙の使用法です。誤用・乱用で、イマイチその範囲が分かりにくいと感じました。「製鉄民族」って何よ…。「製鉄技術集団」とかと言ってくれた方が分かりやすい。


 今回はこんなところです。
 それではまた。
スポンサーサイト

相沢沙呼 『マツリカ・マトリョシカ』他感想…

 朝晩とめっきり寒くなってきて、絶好の読書向けの気候になりました♪
 残暑も厳しくなくて、良い感じですね。
 それでは、今回の分の感想です。どうぞ~。

新刊
・相沢沙呼     『マツリカ・マトリョシカ』(単行本)  ☆4


既刊
・阿部智里      『烏に単は似合わない』      ☆4.5
・――         『烏は主を選ばない』        ☆4
・――         『黄金の烏』             ☆4
・――         『空棺の烏』             ☆4
・筏かつら       『君に恋をするなんて、ありえないはずだった』   ☆3.5
・――         『君に~ そして、卒業』                ☆3.5
・小川一水      『天涯の砦』              ☆4
・川瀬七緒      『よろずのことに気をつけよ』  ☆3.5
・太田忠司      『奇談蒐集家』          ☆3.5


感想

『マツリカ・マトリョシカ』
 「廃墟の魔女」マツリカさんと、その「下僕」柴山君コンビによる学園ミステリー「マツリカさん」シリーズの三冊目となる新刊。
 今回は曰く付きの開かずの間で起きた事件を解くのだが、あろうことか柴山君に事件の犯人の容疑がかけられてピンチに陥る。過去にも似た事件があったというが、時を超えた二つの事件を解決することはできるのか。
 というのがあらすじですが、今回はマツリカさんに動きが…。いつもの引き籠り先であるところの廃墟から出てくるとは。ひょっとして柴山君の為でしょうか? 多分ただの謎解き上の利便性を優先したとかでしょうが…がんばれ柴山‼
 いつもながら学校生活の描写が上手です。相沢さんの学校ものの作品の大きな魅力の一つですね。ところで、「酉乃さんシリーズ」の方の新刊は出ないのでしょうか? こっちも読みたいですね~。


「八咫烏シリーズ」
 阿部さんの作品、まとめて紹介します。
 人型をとれる八咫烏が暮らす「山内」という異界を舞台としたファンタジー作品。各巻ごとに異なる趣向が凝らされていて、シリーズを通して読んでみるとその幅広さに驚けるかも。 なお、各巻一捻りが加えられており、一筋縄では行かいところもこのシリーズの魅力です。
現在、文庫で4冊、単行本で2冊が刊行されており、最新刊で第一部完結となっている。今回紹介するのは文庫版。

『烏に単は似合わない』
 山内を支配する金烏の世継の妃選びを舞台とした、謀略ものの色彩の強い作品。かと思いきや、妃選びの舞台で起こる事件の謎を解くミステリーでもある(松本清張賞受賞作)。 権謀術数渦巻く宮廷ものでありながら、ミステリーとしても楽しめる作品。
 浜木綿がとてもイイ♪

『烏は主を選ばない』
 二作目といいつつ、『烏に単は似合わない』と表裏一体をなす作品(もともとは、合わせて一作だったそうな)。
 こちらは『烏に~』の裏側で、世継たる若宮は何をしていたのかを描く。シリーズ主人公なのに『烏に~』で登場したのは、終盤のみだった彼の真意というか、行動の理由が明らかになります。もう一人の主人公、雪哉も正式に登場します。

『黄金の烏』
 若宮の言う「真の金烏」とは何か、がテーマの第三弾。第一部での宿敵となる大猿たちが登場。『24』風味。

『空棺の烏』
 改めて若宮に忠誠を誓った雪哉をメインに描く、学園もの。ハリポタ風味。雪哉の「黒さ」が十二分に堪能できますw 来る大猿との争いに向けての準備期間。いい仲間が出来ます。

 『玉依姫』、『弥栄の烏』が単行本ですでに刊行されているので、購入しようかどうか迷い中。どうせ文庫化されたらそちらでも買うので、待つべきか。とは言え続きはすごく読みたいのですが…。ジレンマ。



『君に恋をするなんて、ありえないはずだった』、『そして、卒業』
 前回、前々回と紹介した九曜さんの影響でか、個人的にプチ恋愛小説ブーム? まぁ、これは書店でプッシュされていたんで手に取ってみたのですが。
 底辺男子と美少女クラスメイトとの格差・すれ違い系ラブストーリー。二巻で一つの話になっています。単なる理想化された恋愛模様を描いている訳ではないところが割と好感。男の方の中盤以降発揮される無駄な頑なささや、すれ違い後の二人のいじましさに悶絶すること請け合いw


『天涯の砦』

 事故により崩壊したスペースコロニー、辛うじて事故から生き残った人間たちの生存への戦いを描く、ハードSF・サバイバル作品
 大島功という人間の言動にイライラしましたw 逆にあの状況下であの言動がとれるのは大物なのかも? 
 作品としては細部に丁寧に気を配ってあり、サバイバル部分の描写も迫真性があるなど流石小川さんといった仕上がりでした。


『よろずのことに気を付けよ』
 「法医昆虫学」シリーズの作者さんのデビュー作。今更ですが(;´・ω・)
 こちらは、呪術といった「法医昆虫学」とは真逆ともいえるオカルティックなものがテーマ。とは言え、オカルトをオカルトのままで使わないところが流石。民俗学の知識を縦横に使い、呪術を解体、犯人に迫っていく。
 が、この作品は犯人当てがメインの、所謂本格ものではないので、そこは注意。本書の眼目は、民俗学の知識を縦横に用いて呪術を分析し、呪術の性質から呪術者のプロファイルを作って犯人に迫っていくところにあり、犯人当ての推理は二の次。この点は「法医昆虫学」シリーズにも踏襲されていますね。


『奇談蒐集家』
 連作ミステリー短編集。
 種々の奇談が奇談蒐集家・恵美酒(えびす)のもとに持ち込まれるが、語り手が話す摩訶不思議な話は恵美酒の「助手」の手で見事にその神秘性を剥ぎ取られる。しかし、最後の一編「すべては奇談のために」で、その様相が一変する。
 安楽椅子探偵・氷坂(助手)による推理が見事な、最後に不思議な余韻(モヤモヤ)を残す作品。<「奇談蒐集家」という奇談>


 今回はこんなところです。
 「八咫烏シリーズ」がとても面白かった。
 『十二国記』、『図書館の魔女』、「オーリエラントの魔術師」シリーズなど、国産の面白いファンタジー作品が増えてうれしいですね。
 
 あとは、宮部みゆき『この世の春』が気になっているところ。だが単行本…。 『荒神』もまだ読んでいないし…。

 そんなこんなですが、それではまたノシ
プロフィール

ゆーいち

Author:ゆーいち
ゆーいちです。

このブログでは特にジャンルを絞らず、自分が読んだ作品の感想を書いていこうと思います。
記事中の作品についての評価は、おススメ度と見てください。

出来るだけ週一程度のペースで更新していきたいと思います。

よろしくお願いいますm(- -)m

最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
閲覧者数
検索フォーム
カテゴリ
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR