ケン・リュウ 『紙の動物園』他感想

 今回の分の感想です。

新刊
・ケン・リュウ        『紙の動物園』         ☆4.5
・――            『もののあわれ』        ☆4
・野崎まど・大森望編   『誤解するカド』         ☆3.5
・高田大介         『図書館の魔女 烏の伝言 上・下』  ☆4

既刊
・谷崎潤一郎    『春琴抄』    ☆3.5
・倉橋由美子    『聖少女』    ☆3.5
・多島斗志之    『症例A』     ☆3.5
・東野圭吾      『むかし僕が死んだ家』           ☆3
・ウッドハウス    『ジーヴズの事件簿 大胆不敵の巻』  ☆3
・ガルシア・マルケス 『エレンディラ』  ☆3.5


感想

『紙の動物園』、『もののあわれ』
 SF短編小説。もとは『紙の動物園』として単行本で刊行されたものの分冊文庫化したもの。 『紙の動物園』はそのうちファンタージー要素が強い作品群、『もののあわれ』はSF要素が強い作品群とのこと。
 どちらの収録作も素晴らしく面白かった。SF好きの方には是非ともご一読をお勧めします。以下は個人的なおススメ。
 『紙の動物園』では、「紙の動物園」、「結縄」、「太平洋横断海底小史」、「愛のアルゴリズム」、「文字占い師」
 『もののあわれ』では、「もののあわれ」、「円弧」、「波」、「良い狩りを」
 テッド・チャン『あなたの人生の物語』も読んでおくといいかもしれません。

『誤解するカド』
 野崎まどさん監修のアニメ『正解するカド』に合わせたSFアンソロジー。 ディックや筒井康隆をはじめとした、国内外のファーストコンタクトもの作品集。
 個人的には、筒井康隆「関節話法」、小川一水「コズミックロマンス with E」、スタージョン「タンディの物語」、ディック「ウーブ見重く横たわる」、円城塔「イグノラムス・イグノラビムス」、飛浩隆「はるかな響き」が面白く読めた。

『烏の伝言 上・下』
 ファンタジー。
 「図書館の魔女シリーズ」の続編です。文庫化されたので文庫で買いました。
 今回の舞台は一の谷ではなく、ニザマの辺境クヴァングヮン。前回引き起こされた、ニザマ政変を逃れるべく逃避行する姫とその一行が話の中心です。
 そのため前回とは作風が違ううえ、終盤までマツリカもキリヒトも登場しないので、ちょっとモヤモヤしますがさすがに読ませてくれます。 今回も名言が多い。 剛力衆と鼠たちがいい味出してる。
 シリーズ第三作が今年刊行される予定だそうですので、そちらも今から楽しみです。 キリヒトはどうしているのかなぁ…。

『春琴抄』
 未読だったので。 もっと変態変態しているのかと思いきや(だって谷崎だし…)、意外に素敵な物語でした。あとがきにありますが、「単なる被虐趣味をつきぬけて、思考と官能が融合した美の陶酔の世界」との形容がふさわしいものでした。

『聖少女』

 近親相姦をテーマに、独特の怪しいブラックユーモアで描き出した作品。 ことさらに性行為に焦点を当てたような作品ではなく、近親相姦の聖化、行為の昇華を目指した作品。 最終盤のヒロインのセリフ、「そしてとうとうあたしのなかにとじこもろうとなさるのね、そして、あたしのなかで、たぶん、あなたのゆっくりとした死がはじまるのでしょうね……」(p.232)が深い余韻を残す。

『症例A』
 ミステリー作品。 ただし犯人は病気であり、推理は診断。 ある少女の病状の診断・治療めぐる、精神科医である主人公と他の医師、臨床心理士とのやり取りをメインにした作品。
 解離性同一性障害、いわゆる多重人格を議論の中心に据えた作品だが、ことさらサスペンスチックに脚色されておらず、地に足のついた、医学的知見に基づいた丁寧な議論がされているところに好感が持てる作品。医学用語なども丁寧に説明されていて、難し過ぎるといった心配はいらない。

『むかし僕が死んだ家』

 ノンシリーズで、未読だった作品。 幼少期の記憶がないという元恋人の記憶を辿る為、彼女の祖父が遺した手掛かりをもとに記憶を探ることに。 特段これと言ったことはないが、ヒロインの最後のメッセージが良い。

『ジーヴズ』
 文春文庫版「ジーヴズシリーズ」の第二弾。
 今回もジーヴズ執事は素敵ですw 恋多き男ビンゴにとうとう年貢の納め時が来るとは…。

『エレンディラ』

 ノーベル賞作家ガルシア・マルケスによる、がたっぷり詰まった「大人のための残酷童話」短編集。 もう少し取っつき難い作品かと思っていたら、読みやすくてびっくりした。 ブラックだけれど、どこかユーモラスで、ファンタジックな作品。
 個人的には、表題作「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」、「大きな翼のある、ひどく年取った男」、「奇跡の行商人、善人のブラカマン」が気に入る。
 やはり「エレンディラ」は、桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』に似ている気がする。『砂糖菓子~』は大好きです。


 今回はこんなところです。 実は以前読んだ本を読み返したりしていたので、少な目です。
 それではまたノシ
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5/7更新 二回目

 紹介後半戦です。 後半戦の方が数が多いのですが…。

既刊
・倉橋由美子     『ポポイ』              ☆4
・――         『倉橋由美子の怪奇掌編』    ☆4
・北村薫        『冬のオペラ』           ☆4
・――          『覆面作家は二人いる』     ☆4
・岩井志麻子     『ぼっけぇ、きょうてえ』      ☆4
・恒川幸太郎     『夜市』               ☆4
・福永武彦       『草の花』              ☆4
・東野圭吾      『夢幻花』              ☆3
・森見登美彦     『新釈 走れメロス 他四編』   ☆4
・倉知淳        『星降り山荘の殺人』       ☆3
・米澤穂信       『リカーシブル』           ☆3.5
・コーンウェル, P.   『検視官』              ☆3.5


感想


『ポポイ』、『怪奇掌編』
 『ポポイ』は、ヨナカーンの首を手に入れた後のサロメの日常といった趣の話。生首と少女との奇妙な交流を描く。『怪奇掌編』も、『ポポイ』同様にブラックユーモアを交えた文体で描き出される怪奇掌編集。
 どちらもおススメ。特に『ポポイ』は最高でした『聖少女』、『交歓』も買ったので、こちらも楽しみ。

『冬のオペラ』、『覆面作家は二人いる』
 ミステリー作品。 「円紫さんと私」シリーズが終わったので、次に手を出してみた次第。
 『冬のオペラ』は、表題作がよかった。ほろ苦い結末に探偵の悲哀を感じる。 『覆面作家~』は、コメディミステリータッチ。「外弁慶」作家であるお嬢様が面白い。 どちらも北村さんの作品らしく、丁寧に書かれていて面白い。

『ぼっけぇ、きょうてえ』
 何気に読んでいなかったので。 岡山県の民話(?)、土俗に材を採ったホラー短編集。
 表題作のインパクトが凄い。ぞわぞわと鳥肌が立つような、恐怖とは違う戦慄が走る。何より恬淡と語る語り部が怖い…。 他の収録作「あまぞわい」、「依って件の如し」も面白かった。 「密告箱」はそれほど…。

『夜市』
 ホラー(?)。
 「夜市」は、冒頭が傑作でした(本編も面白かったですよ)。「今宵は夜市が開かれる。夕闇の迫る空にそう告げたのは、学校蝙蝠だった。」。かつて妖たちの夜市で、才能と引き換えに弟を売った兄。罪悪感に耐えかねた兄が弟を買い戻しに、再び夜市に出かける。そこで彼がとった行動とは…。
 併録されている「風の古道」も面白かった。両者ともに、ホラーというかマジックリアリズム的なお話でした。現実のすぐ隣にある別世界の話。

『草の花』
 言葉の元来の意味での「プラトニック・ラブ」を描いた作品。 前半はサナトリウム文学のようであり、後半は回想の形をとった青春小説。 魂の孤独、真実の愛を描く。 およそ60年も前の作品ですが、今でも十分楽しめる深い文学性の作品でした。

『夢幻花』
 現代を舞台にしたミステリー。 現場から消えた黄色い朝顔をめぐって事件が展開していく様は、流石に面白かった。 が、明らかになる事件の真相と話の裏側がイタダケナイ。 宿命とか運命とかで軽々に説明しないで欲しかった。
 因みにここでも原発の話が出た。本筋(事件)ととくに関わらないのに…。 現代日本を舞台にするうえでもはや外せないものなのかもしれないが、もうお腹一杯です。

『新釈 走れメロス』
 『走れメロス』他、『山月記』、『藪の中』、『桜の森の満開の下』、『百物語』を森見テイストたっぷりに解釈したもの。愛すべきおバカさんたちの青春模様を存分に味わえる。
 どの話も、元の話の骨格はほぼそのままなので、各原作を既読の人はより楽しめるかも。未読の人出も楽しめます(名作を読んだ気になれる、カモw)。

『星降り山荘の殺人』

 正々堂々とした本格ミステリー作品。 雪に閉ざされた山荘で、連続殺人事件が起こる。果たして犯人は? トリック、話の構成など非常にしっかりとしたミステリー作品でした。
 んが、どうにも「嘘はどこにも書いてませんよ」と言わんばかりのとある仕掛けに引っ掛かりを覚える。個々の事象は確かにフェアだが、全体として見たとき明らかに問題があるように感じる。心が狭いだけか…。

『リカーシブル』
 主人公の弟の言動をなぞるかのように事件が起こる謎をめぐるミステリー。 最後に町の謎と弟の「予言」の正体が明らかになる場面は、見事の一言。 全体の話としては、主人公の少女ハルカの成長ものの色合いが濃い。家庭、学校、社会、それぞれにおける自分の居場所を探っていく。大人に振り回され、ままならない自分との闘いの話。 物語終盤で突き付けられた現実にも負けずに頑張って欲しいもの。

『検視官』
 しばし積読されていましたが、やっと読み終えましたw ゆっくりとシリーズを追いかけていこうと思います。


 それではノシ

5/7更新 一回目

 今回の分の紹介です。
 少々量が多くなったので、二回に分けて更新しようと思います。
 こちらでは、新刊本の紹介。 次の更新では、既刊本の紹介となります。


新刊
・久生十蘭     『魔都』          ☆4
・J. L. ボルヘス  『アレフ』          ☆4

 コミックス
・濱田浩輔     『はねバド 10』       ☆4
・宮原るり      『僕らはみんな河合荘』  ☆4.5


感想


『魔都』
 復刊本。 絢爛と狂騒に彩られた、昭和9年の大晦日の帝都東京を舞台にした探偵小説。 とある事件を中心に据え、関係者たちを群像劇の手法で活写している。
 所謂本格ミステリーのような「犯人当て」小説ではないことに注意。犯人探しよりも、小説から見えてくる魔都東京の雰囲気を楽しむ作品。登場人物たちが、これまた一癖も二癖もあり、一筋縄ではいかないところも面白い。 個人的には、眞名古警視が好き。イメージは、『三月のライオン』の死神さんでw 
 他の作品は復刊しないのでしょうか?

『アレフ』
 『伝奇集』以来のボルヘス。
 「不死の人」、「アヴェロエスの探求」、「アレフ」が気に入る。
 「不死の人」は、不死人の都を探索することになったローマ人による手記。言葉、記憶をめぐる物語。 「アヴェロエスの探求」は、イスラムの学者アヴェロエス(ギリシア哲学・アリストテレス哲学をヨーロッパに「紹介」した人)が語る言葉と記憶の話。 「アレフ」は自己内部に自己を含む全てを包含した円環についての話。 どれも言葉、記憶、永遠性といったものをテーマにしている。


『はねバド』
 インターハイ開幕。 全国の猛者どもとの戦いの開始。
 個人的には、志波姫が好きなので、彼女の試合が見れてよかったです。まともに試合描写があったのは初めてかな。 試合運びが中々エグくて(いやらしくて)、良いですw 可愛いのにエグイ。

『河合荘』
 律ちゃんと宇佐の関係に急展開が!?
 いつにもましてイチャイチャ感増し増しになっておりまして、そりゃあ麻弓さんも怨霊化しますよ。ベタ甘ですので、人によっては後半は悶え死ぬかもしれません…w どうなる次巻w


⇒二回目につづく
プロフィール

ゆーいち

Author:ゆーいち
ゆーいちです。

このブログでは特にジャンルを絞らず、自分が読んだ作品の感想を書いていこうと思います。
記事中の作品についての評価は、おススメ度と見てください。

出来るだけ週一程度のペースで更新していきたいと思います。

よろしくお願いいますm(- -)m

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