大森藤ノ 『ダンまち 7』 (GA文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7 (GA文庫)ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 7 (GA文庫)
(2015/04/14)
大森 藤ノ

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評価(☆5が満点)
☆3.5

あらすじ
 新生【ヘスティア・ファミリア】始動!
 「戦争遊戯」の激戦を乗り越え、新たに眷族に加わったリリ、ヴェルフ、命(みこと)。ベルのもう一つの家族。
 ある日不審な行動をする命を追ってベルが迷い込んでしまったのは、オラリオの歓楽街。そこは【イシュタル・ファミリア】が管理する夜の街。そこでベルは捕らわれの身となっている不思議な雰囲気の少女、春姫(はるひめ)と出会う。オラリオの裏側でうごめく陰謀に飲み込まれるなか、少女のためにベルが下した決断とは――。

感想
 今回は、いつもとは一味もふた味も違った話でしたね。
 そもそも、表紙からして怪しさ満点だし(笑) 本文では、教○ママさん達が読んだら文句を言いだしそうな言葉が。なかなか見ないですよね、娼婦って…。
 そんなこんな新刊ですが、アニメの放送も始まったためか、筆が進んだのか分厚いです。


 内容ですが、今回はなかなかイレギュラーな展開でした。

 ・ 主戦場がダンジョンではない。 というかダンジョンに出かけてすらいない。
 ・ アイズが登場していない。(たぶん)一シーンも…。

 とはいえ、あとはほとんどいつものような胸熱展開でしたので、特に気になることはなかったですね。
 ライトノベルというか、少年少女向け媒体で色街を登場させるのもなかなか珍しいですし、思い切ったことしたなぁと思ったり。

 あとがきで作者さんも触れていますが、暴力ががメインの冒険者たちの街なら、まぁ普通、色街はありますよね。 んで、そこを避けて通るのは良くないだろうということのようです。
 そこの部分を否定、非難するつもりはありません。ファンタジーの中のリアル。 そんな感じでいい刺激になったのではないでしょうか?


 そして今回の一番の見どころ、注目点は、いよいよあの人が表立って動いたというところでしょうか。
 今回はあの人の個人的な因縁もあっての登場でしたが、表舞台に曲がりなりにも立ったということは、今後の展開に波乱を呼びそうですね。


 てか、アイズの出番が無いなんて今までありましたっけ? それとも三カ月連続刊行で、来月『外伝』が出るから、そっちで補完しろということかしら。
 6月には8巻が出るそうで、大変ですね。 頑張ってください(^_^;)


 そしてドンドン「ファミリア」がベルくんのハーレム化しているのはいいのだろうか…。
 頑張れ、ヘスティア。 アニメのようにあざとく行くんだ(一話しか見てないけど)。
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川上稔 『境界線上のホライゾン (8)中』 (電撃文庫)

GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン (8)中 (電撃文庫)GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン (8)中 (電撃文庫)
(2015/04/10)
川上稔

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
「――本能寺の変が終了するまで、あの場所には、近づかないで頂きたい」
 P.A.Odaの重要人物、森・蘭丸が現れ、武蔵の介入を制止してきた。森・蘭丸は、武蔵が京に近づくことによって、「戦闘とは別の理由」で皆に害がなされる恐れがあるというのだが……。
 その一方で、羽柴へのいやがらせ行為、もとい武蔵の関東出入りに関する、羽柴と武蔵の間での首脳会議が幕を上げる。 武蔵副会長、本多・正純が繰り出した先制攻撃に対して、羽柴側、羽柴・藤吉郎と竹中・半兵衛はどう応じるのか?
 歴史再現のターニングポイント、本能寺の変が間近に迫り、動き出した戦国各国。それぞれの最善手に向けて、交渉線が火花を散らす、第八巻中巻。

感想
 上巻に引き続き、羽柴方へのいやがらせの巻です。

 それに加えて、作品内では夏休みということもあり、それに見合った各種行事も展開されていますよ~。
 サービスショットもありの水着回ですw
 カラーに、アデーレとはこれいかに。 貧○をサービス? ただ同じ枠とは言え、正純のカットはモノクロだけど良かったです。


 武蔵以外の各国、特に前回敗戦した羽柴側の連中の様子も見られ、彼らの雌伏の様子もあり、いよいよ本能寺が近い感じが見られます。
 とは言え、今回は夏休み中(歴史再現の禁止期間)ということで根回し期間で、派手な動きはありませんが、次回の派手な動きに向けての準備期間と見ればそれはそれで楽しいものです。

 下巻ではいよいよ、明智との対面が実現するのかな?
 てか、あの人と明智・光秀との関係はどうしてなのかしら。 あの人の相方は分かるんだけども。

濱田浩輔 『はねバド!(5)』 (アフタヌーンKC)

はねバド!(5) (アフタヌーンKC)はねバド!(5) (アフタヌーンKC)
(2015/04/07)
濱田 浩輔

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ(1巻のものです)
 母校、県立北小町高校バドミントン部のコーチになった立花健太郎(たちばな・けんたろう)は、部員数が足りず団体戦にも出場できない部を立て直せないかと悩んでいた。
 現在の部員は、荒垣なぎさ(あらがき・なぎさ)、泉理子(いずみ・りこ)、海老名悠(えびな・ゆう)、伊勢原空(いせはら・そら)の4名(+男子が二人)。試合、そして普段の練習のためにも、新入部員の獲得が急務。
 そんな中、校庭の大木を軽々と駆け上がる一年生、羽咲綾乃(はねさき・あやの)に出会う。彼女に才能を感じた健太郎は、ぜひとも入部してもらうために全力でバドミントン部に勧誘する。しかし、なんと…彼女はバドミントンが大嫌いで…。


感想
 女の子が可愛いです(笑)
 そして何より、絵が上手い。 そのため、女の子たちの可愛さにさらに磨きがかかっています。
 あと、バドミントンをメインにした作品というのも珍しいと思います。
 

 序盤、というか1巻のはじめの方は、スポーツコメディタッチの作風でしたが、回を追うにつれて真面目なスポーツ漫画になりつつあります。 というか、なっています。
 作者、綾乃の喋りが常に小声っていう設定忘れてるんじゃないかなとか思ったりw

 とは言え、真面目トーンになったからといって作品が面白くなくなった訳では全くありません。 女の子の可愛さに、スポ魂の熱さが加わったと思ってもらえばいいと思います。 試合のシーンにも動きと迫力があります。

 最新刊では、IH予選の県大会決勝でチームメイトと優勝を争うという、胸熱展開になっています。
 どっちが勝つんでしょうか。
 リベンジを達成して欲しいような、圧倒して欲しいような。

 個人的には、フレ女の部長さんが好きです。


 今作では、前作『パジャマな彼女』のような駆け足展開にはならないようにして欲しいと思います。
パジャマな彼女。 1 (ジャンプコミックス)パジャマな彼女。 1 (ジャンプコミックス)
(2012/06/04)
濱田 浩輔

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はねバド! (1) (アフタヌーンKC)はねバド! (1) (アフタヌーンKC)
(2013/10/07)
濱田 浩輔

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飛浩隆 『グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉』 (ハヤカワ文庫JA)

グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)グラン・ヴァカンス―廃園の天使〈1〉 (ハヤカワ文庫JA)
(2006/09)
飛 浩隆

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 仮想リゾート《数値海岸》(コスタ・デル・ヌメロ)の一区画、「夏の区界」。南欧の港町を模したそこでは、ゲストである人間の訪問が絶えてから1000年が経過していた。取り残されたAIたちは、人間不在の中、永遠の夏を過ごしていた。
 しかし、その「永遠」は突如終焉の時を迎える。謎の存在「蜘蛛」の大群が、街のすべてを、オブジェクトやAIの区別なく、無化し始めたのだった。僅かに残ったAIたちの、生き残りを掛けた絶望の一夜の攻防戦が幕を上げる…。

感想
先に断っておきますが、この評価はシリーズ二作目である『ラギット・ガール』と合わせての評価です
 単体としてはそこまで面白いとは思えなかったのですが、二作目を読んで評価が上がりました。これ単体だと☆3ぐらいですかね。


 作品としては、綺麗でした。 無駄が無いとでも言えばいいんでしょうか。
 夏のリゾート地を彷彿とさせる「夏の区界」という場所が喚起するイメージが綺麗だという部分もありますが、文体も綺麗です。

 が、無駄というか、本筋にとって余計な部分もそぎ落とし過ぎているような気もします(この点は、作者もあとがきで触れていましたが)。
 それもあり、話の進行が若干唐突過ぎるきらいがあります。 何がどうしてそうなったかの推測ができないままに、話が進んでいる感じが時折しました。
 そのあたりは、『ラギット・ガール』所収の話を読んで補完ができましたので、その点もあって二作合わせての評価とさせてもらいました。

 また、作中で若干のグロテスクな描写がありますので、苦手な方はご注意を。
 作品を読まれればわかるのですが、決して無意味な描写、悪趣味性によるシーンなどではありません。 この部分を指摘して批判されている感想を見ましたが、批判するほどではないように思えました。



 本書の続編となる『ラギット・ガール』では、「大途絶」と呼ばれる人間の来訪の途絶以前の、《数値海岸》形成に至る物語3編と、本書の重要キャラクター二人の前日譚2編が収められています。

 なかでも、タイトルにもなっている「ラギット・ガール」は、《数値海岸》の開発秘話に関するもので、本書を補完するという点でも面白いです。
 話そのものも面白いです。「2014オールタイムベストSF」の短編部門3位になっているのも納得。
 本書では語られなかった、この世界の裏側、SF的な考察も描かれています。
 ただ、個人的には「ジェンダーSF」とか言われていることに違和感が…。 まあ、それは置いておいても楽しめます。


 繰り返しで失礼しますが、『グラン・バカンス』と『ラギット・ガール』、この二作は合わせて読むことをおススメします。

ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉 (ハヤカワ文庫JA)
(2010/02/10)
飛 浩隆

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長谷敏司 『あなたのための物語』 (ハヤカワ文庫JA)

あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)あなたのための物語 (ハヤカワ文庫JA)
(2011/06/10)
長谷 敏司

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 西暦2083年。人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、ITPテキストで記述される仮想人格『wanna be』を用いた実験に心血を注いでいた。『wanna be』に小説を執筆させることによって、使用者が創造性をも兼ね備えることが可能であるということの証明を試みていた。
 そんな折、サマンサの余命があと半年であることが判明する。彼女はのこされた日々をITP商品化の最大の壁である「平板化問題」の解決に捧げようと決心する。一方で、『wanna be』は徐々に彼女のための物語を綴り始める…。

感想
 不思議な感じの作品でした。

 全体的にこれでもかと言わんばかりにSF要素がちりばめられ、作品を彩っているのに、作品はSF作品というよりも、純文学作品のような雰囲気を持っていました。
 死に向かう人間の心的葛藤、人間と機械の相克。
 そうしたあれやこれやが詰め込まれた作品のように思いました。 
 SFでありながら、どこまでも人間の存在を描いた作品ではないかと思います。


 AI人工人格の作成など、SFとしても面白いテーマを扱っていて、そちらの面でも楽しめました。 科学的考察というか、理論的な部分でもきちんと掘り下げられていて、作品内での議論も楽しめます。

 また、死に向かっていくサマンサの心理描写などもしっかり書かれていて、そちらの面でも良い作品でした。
 着実にそして不可避的に死へと向かっていくサマンサの、死への恐怖周囲との軋轢気付き、そうした部分もきちんと描写されています。
 タイトルの『あなたのための物語』というのも、この辺に理由があるのでしょう。
 作者さんが逃げていないです。 
  


 長谷さんの他の作品にも手を出して見ようかなと思えた作品でした。
 あらすじを見る限りだと、『Beatless』(だったかな?)がおもしろそうでしたが、近くの書店に見当たらぬ…。 ライトノベル作品の方は、個人的には好きになれなかったんだけど…。

佐藤青南 『サイレント・ヴォイス』 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

サイレント・ヴォイス 〜行動心理捜査官・楯岡絵麻 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)サイレント・ヴォイス 〜行動心理捜査官・楯岡絵麻 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2012/11/06)
佐藤 青南

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評価(☆5が満点)
☆3.5

あらすじ
 警視庁捜査一課巡査部長で取調官の楯岡絵麻(たておか・えま)、通称エンマさま。行動心理学を用いて、相手の何気ない仕草や行動から嘘を見破るその手腕で恐れられている。
 幼馴染殺害容疑がけけられた歯科医、人気俳優の夫を殺害を自白する国民的女優の妻、クレーマー殺害容疑の占い師、絵麻の同僚を窮地に追い込んだ音大生。
 取調室で絵麻が彼らに向かいあう時、事件の真相が明らかになる。

感想
 警察が舞台でありながら、メイン舞台は事件現場ではなく、取調室。それどころか、基本的に主人公たちは取調室の外に出ることすらないという、いわば安楽椅子探偵小説です。
 あ、でも探偵行為・推理はしていないので、厳密には違いますが。


 この作品の中で特徴的なのが、推理を武器として犯人を落とすのではなく、心理学に基づく観察で追い込んでいくという部分でした。
 刑事ドラマでよくあるような取り調べというよりも、どこか研究室的な感じがします。


 ですが、手法の珍しさだけがこの作品の面白いところではありません。
 主人公である、女性刑事・楯岡絵麻のキャラクターもいい味を出しています。 Sっ気があるところが良いですね。 犯人の嘘に容赦なく切り込んで、真相を明らかにするその手腕にしびれます。


 一方で、先にも触れましたが、理論的に推論を組み立てて犯人を追いつめる形式の作品ではないので、推理小説をお望みの方は注意です。
 取り調べの妙技を楽しむ感じですかね。 刑事小説とも作風を異にしていますが。
 かと言って『半落ち』等とも違うのですが。 とりあえずわりと独特だと思います。 感動系でもありません…。
 作品内で展開される心理学の理論に関する話は楽しめました。

 基本的に、心理学の理論を基にして犯人の行動分析を行い、彼らの自供の嘘を暴いていくのが本書の流れです。
 が、下手をするとワンパターン化、マンネリ化しかねないのですが、長編ではなく短編集の形になっていて、あまり飽きを感じさせないようになっていました。 
 こうした点もあって、長編作品には向かないような気もしますが。


 作品の雰囲気は、次回作以降も特に変わらないのではないかと思うので、後を追うかどうかは考え中です。現状、5作目ぐらいまで出版されていたと思います。

蒼樹うめ 『ひだまりスケッチ』 (まんがタイムKRコミックス)

ひだまりスケッチ (1) (まんがタイムKRコミックス)ひだまりスケッチ (1) (まんがタイムKRコミックス)
(2005/10/27)
蒼樹 うめ

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 やまぶき高校美術科への入学を機に、親元を離れ、学校側のアパートで独り暮らしをすることになったゆの。 ところが、彼女が入居したアパートは「美術家の変わり者達が集まることで有名」ないわくつき物件で…。
 ゆのと他の入居者たちによる、ほんわかドタバタコメディ4コマ。

感想
 非常に今さらなチョイスです(笑)
 名前は見たことはあったのですが、読んだことがなかったんですよね。 でも、最近になって新刊が出版されたのを見て立ち読みした結果、ハマって、中古ながらまとめ買い。

 久々に4コマ漫画を購入しましたが、その中でも一番面白いと思いました。 とは言え、そんなに数を読んではいないのですけどね。
 登場人物たちが可愛いというのもありますが、お話も普通に面白いです。
 4コマとして、一話(?)毎にきちんとオチもありますし、連作としても読んで楽しいという作りになっています。 「4コマはちょっと」という人でも普通の漫画のノリで読むことができると思います。


 登場人物は、途中で増減はありますが基本、ゆの宮ちゃんヒロ沙英(さえ)の4人です。 途中で乃莉(のり)、なずなが加わり、最新刊で茉莉(まつり)が加わっています(ヒロ、沙英が卒業)。
 ちなみに、作中では全ての登場人物には名前か名字しか設定されていません。


 基本的にこのアパートの入居者間でのやりとり、もしくは学校生活を描いた作品です。 音楽を嗜んだり、オタクぎみだったり、カフェで働いたりはしませんw
 特別なことはないけれど、そこが良い。
 癒されます。
 個人的には、沙英と乃莉が好きですね。 宮ちゃんもわりと好き。 


こちらが最新刊です。

ひだまりスケッチ (8) (まんがタイムKRコミックス)ひだまりスケッチ (8) (まんがタイムKRコミックス)
(2015/02/27)
蒼樹 うめ

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 この類の4コマ漫画は、本が高いですよね。
 一冊800円オーバーが普通で、中には一冊1000円のものもありますし…。 刊行ペースが遅いからしょうがないのかもしれませんが、後追いで購入しようとする人間にはつらいですよね。 せめて文庫本ぐらいの値段にはならないのだろうか?

三津田信三 『蛇棺葬』 (講談社文庫)

蛇棺葬 (講談社文庫)蛇棺葬 (講談社文庫)
(2013/10/16)
三津田 信三

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百蛇堂<怪談作家の語る話> (講談社文庫)百蛇堂<怪談作家の語る話> (講談社文庫)
(2013/12/13)
三津田 信三

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 今回はちょっと変則的です。 評価は、二つ合わせてのものとなっています。

評価(☆5が満点)
☆4 (『蛇棺葬』☆3.5、『百蛇堂』☆4)

あらすじ
 (『蛇棺葬』
 幼い頃、引き取られた百巳家(ひゃくみけ)で蛇神を祭る奇習と怪異のただなかに「私」は過ごす。成長した私は、訳あって再びその地を訪れることになる。百巳家にある開かずの離れ、「百蛇堂」。そこで行われる、百巳家の葬送百儀礼で何が起こるのか……。

 (『百蛇堂』
 作家兼編集者の三津田信三(みつだ・しんぞう)が紹介された男、龍巳美乃歩(たつみ・みのぶ)が語ったのは、とある地方の旧家、百巳家での真に迫った実話怪談だった。数日後、彼から送られてきた怪談の原稿を読んだ三津田と周囲の人々を次々と怪現象が襲う。 龍巳が語った長い長い怪談、『蛇棺葬』からの謎と怪異が繋がり、広がる……。


感想
 二冊合わせての紹介ですが、この二冊は前後編などの二分冊の関係にはありません。
 個々の作品自体は独立しているので、どちらか一つだけを読んでも一つの作品として楽しむことができます。  ただ、『蛇棺葬』を読んだ後で『百蛇堂』を読んだ方がより怖さが増すのではないかと思います。


 『蛇棺葬』では、幼い「私」が地方の旧家、百巳家で遭遇した恐怖体験と、長じてから再び百巳家を訪ねることになった「私」の体験から構成されています。
 あらすじを見ていただければわかるかと思いますが、この恐怖体験の語り手が『百蛇堂』での登場常人物、龍巳美乃歩ということになります。
 『百蛇堂』では、その龍巳の怪異譚がもたらす怪異現象を軸に、作家・三津田信三が怪異に挑むという形式です。
 創作と現実、過去と現在が混沌と入り乱れ、恐怖心を煽ってきます。 個人的には、怪異の発生が具体的な場所(「百蛇堂」)に限定されていないため、こちらの方が身近に感じられ、こちらの方が怖かったですね。
 
 
 とは言え、ホラーでありながら単純なホラーだけではないところが三津田さんの作品の面白いところです。
 先に紹介した『のぞきめ』の時にも書きましたが、ホラーと謎解きがこの作品でもミックスされています。 というか、謎が解けたら解けたで、怖さが増すということもままあるんですが(^_^;)

 今回の『百蛇堂』はこちらのパターンでした。
 fictionとnonfictionが混然としているのもあって、今にも自分の所にも来るんじゃないかとも思ったりしました。 最後に明かされたオチもなかなか面白かったです。
 普通なら叩かれそうですが、この作品ではそんなことはなく、むしろより魅力的にしているように思いました。


 あまり書いてしまうと、読んだ時の恐怖感がだいなしになってしまうと思うので、この辺にしておきます。
 あとは是非、ご自身の目で確かめてください。

三津田信三 『のぞきめ』 (角川ホラー文庫)

のぞきめ (角川ホラー文庫)のぞきめ (角川ホラー文庫)
(2015/03/25)
三津田 信三

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 長期休暇を利用したアルバイトで、辺鄙な貸別荘地を訪れた成留(しげる)たち。 バイト中、仲間がであったという謎の巡礼の母娘に導かれるように彼らは禁じられた廃村に紛れ込み、恐るべき怪異に見舞われる。
 民俗学者・四十澤(あいざわ)が昭和初期に残したノートからその村が「弔い村」という異名を持ち、「のぞきめ」という付きものの伝承が残る忌み村だということが明らかになっていく。
 作家である「僕」が出会う二つの怪異譚。その衝撃の関連と真相とは。

感想
 最近ハマりだした、三津田信三さんの作品です。
 『首無~』などの感想は、読み終えているのでまた後で上げる予定です。 どれも面白かったです♪


 この作品は、上記「刀城言耶シリーズ」でも、「死相学探偵シリーズ」でも「作家シリーズ」でもない独立した作品となっています。 作家シリーズのようではありますが、ちょっと違う感じです。

 語りがとても練られていて、怖さが増していますです。
 序盤の一文がとても効いていて、読み終えた後も怖さが続きます (((゜Д゜)))ガクガクブルブル
 というよりも、読んでからの方が怖いかもw 上手に人間心理を突いた作品でした。


 イメージとしては、《洒落怖スレ》の「リゾートバイト」にちょっとだけ近いかなと思います。 話としてはまったくの別物ですが…。 「リゾートバイト」もなかなか怖い「お話」です。
 その上に、民俗学的な怪異の謎解きというスパイスが加えられています。
 ホラーとしても普通に怖いのですが、ただ怖いだけではなくそこに裏付けのように民俗学的な考察が重なるので怖さ倍増です。
 

 ホラーと謎解き。
 この二つの混じり具合が、とても良く、怖さと謎解きの快感を感じられるという面白い作風です。これは、三津田さんの他の作品にも共通している作風ですので、興味をもたれたら他の作品も読んでみることをおススメします。

 京極夏彦のような怪異+探偵ものに、ホラー要素が加わっていると言えば近いかと思います。
 「死相学探偵シリーズ」の方は手を出してはいないのでわかりませんが、「刀城言耶シリーズ」と「作家シリーズ」は上記のような作風です。 より謎解きの方に軸足が置かれている等の違いはありますが。

 ちなみにですが、映画化が決定しているそうです(オビ情報)。 映像化したらさらに怖くなるかもしれませんね。


 何かに覗かれている――そんな気がする時は、必ず一旦本書を閉じてください。(あとがきより)

牧野修 『傀儡后』 (ハヤカワJA)

傀儡后 (ハヤカワJA)傀儡后 (ハヤカワJA)
(2005/03/24)
牧野 修

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評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 20年前の破滅的な隕石落下により、大阪は異形の街と化した。落下地点から半径6キロは、現在も危険指定地域とされた。 現在この地域は、五感で世界と融合するというドラッグ「ネイッド・スキン」、全身の皮膚がゼリー化するという謎の奇病「麗腐病」の中心地として、破滅の予兆をはらんだ都市を形成していた。
 人類社会崩壊の予兆の中、変容する人の意識と世界が醜悪かつ美麗に描かれる。

感想
 崩壊しつつある社会を舞台にした作品ということで、退廃的な雰囲気を漂わせた、そう言う意味では実に「SF的」な作品でした。
 とは言え、『ニューロマンサー』の冒頭や『ブレイドランナー』の社会のような感じではありません。あの、「なんか違う感じ」満載の日本文化風ではありません。
 あくまで現代日本(大阪)の延長でしかありません。 そのいみでSFに付きものの「未来感」はそれほどありません。


 作品としては「服」、「着る」ということがキーとなっており、なかなか異色の作品でした。 

 また割とグロテスクシーンが出てきますので、苦手な方は気を付けられた方が良いと思います。 程度としてはそこまでではないとは思いますが、ちょっと多いかもしれません。

 まぁ、それらを含めても作品の雰囲気としてはわりと好きな方だったのですが、ストーリーがイマイチ楽しめませんでした。最後の最後で明かされたあの真相は、好き嫌いが分かれそうですね。 私は後者でしたが。
 まったく関係ないのに、なんとなく『黄泉返り』(原作小説版)を連想しましたw 
 ※※本作では、人間は甦ったりしません。作風も全く違います※※


 上記のように「服」・「着る」といったことに拘った小説ということで、他のSF小説とは一線を画した感があります。
 お話としては面白いのでしょうが、この差異の部分を受け入れられるかどうかがこの小説を楽しめるかどうかの分岐点になるんではないでしょうか。

 いみじくも巻末の解説にありますが、「(この作品は)(中略)…宇宙論SFであり、哲学SFであり、言語論SFであり、小説論であり、単なるフェティシズム小説ですらある」(P.536)とあるように、単純なSFのイメージに納まらないものでした。

 ですので、「普通の」SFをお望みの方には向かないかもしれません。
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