伊藤計劃・円城塔 『屍者の帝国 』(河出文庫)

屍者の帝国 (河出文庫)屍者の帝国 (河出文庫)
(2014/11/06)
伊藤 計劃、円城 塔 他

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評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 屍者復活の技術が全欧に普及したた19世紀末、医学生ワトソンは大英帝国の諜報員にスカウトされ、アフガニスタンへの潜入任務を言い渡される。アフガニスタンの奥地でワトソンを待ちうけていたのは、潜入任務の目標、屍者の王国の王カラマーゾフだった。彼の渾身の依頼を受けたワトソンは、近年頻発している屍者が関わる事件の裏にいると言う最初の死者、ザ・ワンと「ヴィクターの手記」を追い求めて世界を駆けることに…。

感想
 非常に抑制された、恬淡とした文章でした。
 作中のとある趣向、屍者による口述筆記という形式をとっていると言う設定上仕方が無いのかもしれませんが、非常に淡々と進みます。
 屍者は、生者のような感情を持ち合わせていないと言う説明がされているので。
 そのせいか、物語自体がとても淡白な印象を与えてしまっています。なんと言うか、盛り上がりに欠けると言うと言い過ぎですが、もう少し感情というか、情緒的なものがあってもよかったのにと思います。


 ストーリーはあらすじに書いたとおり、世の中に屍者、すなわち「フランケンシュタインの怪物」があふれている世界設定となっています。 つまり、人間から死が奪われたと言うか、遠ざけられた状態の世界です。
 「死なない」のではなく、死んだ後も動き続ける感じです。
 「永遠の生を死に続ける」と説明されてました。個人的には「永遠の死を生き続ける」の方がしっくりきますが。

 そんな死人にあふれた世界で、屍者作成技術に関する陰謀を巡って、ワトソン氏の冒険が繰り広げられます。
 このワトソン氏、誰もが知るあのワトソンと「同一人物」ということになっています。
 名探偵の助手のワトソンです。
 元のワトソンもアフガン帰りということになっていますが、(というかネタ元がそうなっているので)冒険先もアフガンになったんでしょうね。まぁ、こっちのワトソンは日本にも行っていたりしましたが。


 作品としては、SF的なスパイ小説の雰囲気でしょうか。 諜報員ワトソンの活動記録です。
 スパイとはいっても「007」とか「MI」でのような雰囲気ではなく、トム・クランシー的な謀略もの寄り。アクションがない訳ではないけれども、頭脳戦がメイン。
 『虐殺器官』や『ハーモニー』のような、活動的な作品ではありません。作品としてはそれら前作のようなものを期待していたので、余計に淡々とした感じが強かったのかもしれません。



 プロットは伊藤さんが作ったそうですね。
 『虐殺器官』では言葉、『ハーモニー』では意識を取り上げていましたが、今回は死ですかね。最後まで読むと言葉なような気もしますが。

 円城さんには失礼になってしまいますが、やはり出来れば伊藤さんが書かれたものを読んでみたかったですね。
 「19世紀にイスラエルと出現させるにはどうしたらいいか?」とかを考えていたとか聞くと、そちらも読んでみたくなります。

 
 もちろん、面白くなかった訳ではありませんが、先にあげたような理由で盛り上がりに欠けるきらいがあった気がしますので、微妙な評価とさせてもらいます。
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渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10』 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10 (ガガガ文庫 わ 3-16)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10 (ガガガ文庫 わ 3-16)
(2014/11/18)
渡 航

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評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 冬休み。のんびりとした年の瀬、年明け。
 合格祈願の初詣や買い物など、普段はしない予定がいの外出が重なる八幡(はちまん)が新年に街で出会ったのは、雪ノ下陽乃(ゆきのしたはるの)と葉山隼人(はやまはやと)、そして…。
 一緒に過ごしてきた時間の中で、お互いのことを多少は知ることができていたように思っていた。でも知らないことの方がまだたくさんあるのだろう。
 二年生という学年もあとわずか――。

感想
 なんだか、雪のんが可愛過ぎてびっくりしました。デレ期?デレ期?
 とりあえず、一山は越えたからですかね。本丸はまだまだこれからみたいですが。
 
 陽乃お姉さんは相変わらず、小悪魔ただし大魔王クラス)でした。そして何気に表紙まで飾る…。
 どんなサブキャラ?
 ちなみに「大魔王うんぬん」は、作中での八幡の発言です。「大魔王からは逃げられない」だそうなw 



 今回は前回のクリスマスイベント後、年の瀬を挟んでの冬の出来事でした。
 メインは、高校生としては避けては通れない進路にまつわる悲喜交々。進路によってはこの先も一緒にいられなくなることもあり。新年度以降のクラス分けに関係もあり。

 変わっていくことと、変わって欲しくないこと。 新しい季節と、新しい関係。
 そうしたあれこれのお話でした。


 だんだんというか、だいぶ前からというか、ヒッキーは「ぼっち」の名を返上すべきなのではないかと思ったりw
 あんだけかわいい女の子たちに囲まれてぼっちとか…。
 てか、いろはが奉仕部の面々に懐いててちょっとびっくりしました。 あとわりとまともになってたw

 あ、今回は、陽乃を表紙にしておきながら、メインの話は葉山です。
 雪のんの話なのかと思ったよ。とうとうか、って。
 「完璧超人」である葉山のちょっとした裏側というか、本心的・本音の部分が見られて少し好感度が上がりました。まぁ、裏は誰にでもあるよねぇ、って言うお話。とは言え、裏も綺麗めな葉山君でした。
 ヒッキーの解決方法が、今回はわりとまともかつ大人しめでびっくりしましたw

 次巻は、3年生に進級しての春以降の話ということになるんでしょうか?
 それとも「10・5巻」になって、春休みのアレコレを描く短編集みたいになるのでしょうかね?

相沢沙呼『ロートケプシェン、こっちにおいで』

ロートケプシェン、こっちにおいでロートケプシェン、こっちにおいで
(2011/11/19)
相沢 沙呼

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評価(☆5が満点)
☆4


あらすじ
 やっと酉乃(とりの)の本心を受け止めることができたと思ったクリスマスのあの日。勢いと雰囲気の力を借りて告白した僕は、なんと彼女の返事はおろか、連絡先さえ聞き忘れたまま冬休みに突入してしまった。
 「もしかして迷惑だった?」そう考えてしまい悶々と過ごす僕に、新年早々織田さんたちからのカラオケの誘いがかかる。そこで起こったちょっとした事件の謎を解くべく、ボクは『サンドリヨン』へ向かったのだが…。

感想
 やっと買えました(*_*)
 近所の本屋さんにはなくて、ちょっと出かけた時に立ち寄った書店で発見して購入。

 相沢さんの作品はちょくちょく読ませてもらいましたが、やっぱり「酉乃さんシリーズ」が好きです。
 文体のみずみずしさがちょうど作品世界にマッチしていますし、文章の読みやすさとテンポがすごくいい。他の作品も同じ感じはするのですが、こっちは作品の雰囲気にマッチしている感がより強い気がします。

 相沢さんは高校生を描くのがすごく上手な気がします。『ココロファインダ』とかでも思いましたが。
 ぶきっちょな酉乃さんは可愛いし、八反丸さんのツンデレっぷり(?)も好きですね。
 須川くんのへたれっぷりにも好感が持てますw
 登場人物たちのキャラクターが素晴らしいのも、この作品が好きな理由の一つです。読んでいて楽しいですし、次に彼らがどんなことを言い出すのかが気になります。

 特に今作は須川くんと酉乃さんのもどかしい恋愛模様を遠くから優しく見守りつつ、謎を楽しむことができました♪
 そりゃ帯にも「須川くんの『なかなか』進まない恋の行方も必見」とかって書かれますよw
 このもどかしい感じ、嫌いじゃないです。



 作品としては、今回もマジックのトリックの手法に因んだ短編連作集という形です。個々の独立した事件、話題が最後に綺麗に繋がって一つの結末を導くと言う大きな流れは前作を踏襲しています。

 手品に関する蘊蓄やあれこれは、今回も健在です。
 手品の手法をトリックに活かしているのも、このシーリーズの特徴ですね。そこも面白い点です。


 数ある学園ミステリー作品の中でも、高校生という多感な時期の姿を見事に描き出しているすばらしい作品だと思います。また無理のなりトリック、舞台設定と、作品自体が綺麗に整っているところもいいですね。

 学園ミステリーがお好きな方には是非一読をお勧めします
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