佐島佑『ハサミ少女と追想フィルム』 (角川ホラー文庫)

ハサミ少女と追想フィルム (角川ホラー文庫)ハサミ少女と追想フィルム (角川ホラー文庫)
(2014/07/25)
佐島 佑

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 最近の角川ホラー文庫、キャラミスとかの作品の分類に困っている管理人です(笑)
 ホラーなのか、ミステリーなのか。それともラノベの変種なのか…。手法がライトノベルに似ているので、ラノベでもいいのかも。

評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 美術大学になんとなく入学した草食系男子、都築道郎(つづきみちろう)は、ひょんなきっかけで知り合ったおかしな先輩、檜垣鷹士(ひがきたかし)に誘われ、どういう訳かホラー映画を作ることに。
 勉強のためにと渡されたホラー映画を見る羽目になった道郎が、あまり乗り気になれないままに映画を見ていると、再生していたPC画面から突如大ハサミを持った少女が現れる。カルミンと名乗る少女につきまとわれることになった道郎は、やがてこの世のものではないもの、カルミンが「ハザマ」と呼ぶ世界が見えるようになり…。
 映画作りに奔走しつつも、ハザマが起こす不思議な事件をカルミンとともに解決していく。

感想
 『ホーンテッドキャンパス』の二番煎じ系かと思いきや、二番煎じでしたw
 が、キャラクターたちが立っているので、別物として十二分に楽しめる作品になっていました。

 管理人的には、ヒロインの速水理緒(はやみりお)が好きですね。
 ヒロインを好きになれるかどうかが、こうした作品のキモだと思うのですが、成功していますねw
 女の子女の子しておらず、サッパリしているというか、べらんめぇ?
 そこはかとない漢(おとこ)を感じますw かと言って可愛さが欠片もないわけでもないという不思議な女の子です。

 お話そのものは、基本的に『ホーンテッドキャンパス』を思い出してもらえればいいと思います。ただ、より現実味は薄くなっていますね。
 また同じように短編連作集の形をとっています。間延びせず、テンポ良く話が進んでいてスイスイ読めます。が、難点としては、ホラー要素がますます薄くなっているので怖くはないですし、かなりライトノベル寄りです。

 そもそも論として「キャラクターノベル」として作り、売り出している時点でライトノベルに近くなりますし、人によってはライトノベルそのものだと言うかもしれません。
 だからと言って、面白くないとかいう訳ではありません。ラノベだから、ラノベっぽいからという理由で敬遠しないで欲しいなと思います。面白い作品ならラノベだろうと一般書籍だろうと構わないと思います。
 

 ちなみに本書(続巻が決定しているようですが)では、まったく映画の撮影には入りませんでした。そして、映画論や撮影論などの話もほとんどありません。キャスト選びと、シナリオ作成に入ったところです。
 映画の話を期待されていると、肩透かしを食う可能性があります。反対に、小難しい映画論のような理論考察はまったくないので、ド素人でも入りやすいと思います。
 
 それはさて置き、結局ぼっちだった道郎くんはぼっちではなく、草食系と言いつつクラスの女子に囲まれるリア充でした…。サギですねw よくある展開なので、別にいいのですが。

 個人的には、「黄昏ノート」の話がおススメです。
 イイハナシダナー。
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上田早夕里『華竜の宮』 (ハヤカワ文庫JA)

華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)
(2012/11/09)
上田 早夕里

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 またまたSFですw

評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 ホットプルームの上昇による海底隆起により、陸地の大部分が海に沈んだ25世紀の地球。
 人類は未曽有の危機を辛くも乗り越え、激変した地上に適応して安定を取り戻した。地上に残った人類、陸上民は、僅かに残された土地と海上都市を中心に高度な情報社会を維持していた。他方海に適応するため遺伝子改造された人類、海上民は〈魚舟うおぶね〉と呼ばれる生物船を用いて、海上で自給自足の生活を営んでいた。
 外交官、青澄誠司(あおずみせいじ)は、狭くなった地球で人類が共存していくために日々様々な組織との交渉をこなしていた。そんな日々のなかで、もたらされたいつもと変わらない海上民との折衝のなかでツキソメという名の不思議な海上民の女性と出会う。そして彼女との出会いが、彼と人類をさらなる過酷な運命の変調へと導く。

感想
 純粋なSFでありながら、外交官の物語でもあるという面白い本でした。
 プロローグと終盤からエピローグにかけてがSF色が強く、中盤というか本編は「外交官青澄」といった感じが強いです。
 またプロローグが現代(2017)を舞台にしているので、物語の中心となる25世紀がさほど遠く感じないようになっています。書き出しから引き込まれました。

 また本作は、最新の地球惑星科学の理論を基にした世界観を持っているので、そこもいい意味でのリアリティの醸成に一役買っています。
 プルームテクトニクスとかプレートテクトニクスだとか、大学時代の講義を思い出しますねw とは言え、分かりやすさと読みやすさを作者さんが意識されているので、決して難しいことはなく、前知識が無くとも理解できるかと思います。


 作品は陸上民である青澄、海上民であるツキソメの二人の視点を交互に置いて書かれています。陸上から見た海上、海上から見た陸上という二つの視点から世界を見ることになります。
 また青澄の視点は、彼に付けられているアシスタント知性:マキによる一人称で語れています。ぱっと見は三人称の文体ですが。
 これも面白いですね。 最後の展開を考えると、色々ありそうですw


 個人的にはもっとSF的な背景、世界設定が気になるところです。
 魚舟とか、それから派生した獣舟とか。
 この時代の遺伝子改良技術とか。人間を完全に別の生物に作り替える技術があるとか、興味が尽きません。
 袋人とか。そうしたものが生み出された当時の時代のことも描いて欲しいですね。
 本書の越末に向かう数十年間のお話は、別作品として発表されているようなのでそちらは見てみようかと思います。
 

 本作品の終わり方は珍しいような気がしますが、どうなんでしょうか?
 管理人は判断しかねるので、「へぇ~こう言う終わりなんだぁ」と思いましたがw
 賛否はありそうですけどね。
 本書のテーマを考えた時、個人的には以外にありなのではないかと思います。

 印象に残ったのは、終盤の青澄の上司である桂大使のあるセリフです。
 すべてを受け入れてもなお進もうとする、桂大使の人間性が現れているいいセリフだと思いました。

伊藤計劃『ハーモニー 』(ハヤカワ文庫JA)

ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
(2010/12/08)
伊藤 計劃

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 『スワロウテイル人工少女販売処』を読んで、SF作品を読みたくなり購入。
 ひとまず有名どころからということで、伊藤計劃さんの『ハーモニー』です。

評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 21世紀前半、〈大災渦〉と呼ばれる世界的な大混乱を経て、人類は新しい社会形態、大規模福利厚生社会を作り上げていた。医療分子研究の進展によって人間社会から、殆どの病気、風邪までもが駆逐され、人間同士の想いやり、優しさ、倫理観が広がり、理想社会=ユートピアが実現していた。
 しかしそんな社会に蔓延るやさしさや思いやりを、見せかけにすぎないと考え、そんな社会で生きていくことに産んだ三人の少女は、餓死による自死を決行した。それは自死こそが、唯一許された自己表現だったから。
 事件から13年後、死ねなかった少女:霧慧トァン(きりえとぁん)は、突如として世界を覆い始めた大混乱の影に13年前に死んだ少女の影を見る。

感想
 面白かったです。
 
 ただ管理人は失敗しておりまして、先に前作である『虐殺器官』を読んでいなかったのです。
 読んでおくべきだった気がします(^_^;)
 もちろん今作『ハーモニー』単体でも十分楽しめますし、一冊で完成していますが、より深く楽しめたのではないかと。皆様は注意を。


 理想的な社会、ユートピア。
 聞いていると素晴らしい気がしますけど、やっぱりどこか胡散臭いですよね。餅に描いた絵というか…。
 今作では、そんなユートピアがある程度実現された世界でのお話となります。ある程度というのは、政治対立によって達成されていない地域が各地にのこされているためです。

 人間はみんな5歳を迎えると、体内に医療分子を入れ、常に体内をモニタリングすることで病気から免れています。それにより人間は老衰以外で死ぬことがほとんど無くなり、争いが無くなった社会となっています。
 生老病死の四苦の内、病とそれに伴って生も駆逐した形でしょうか。生きることが苦しみではない社会ですし。

 でもこれってよく考えるととても怖い気がしますけどね。 24時間常に監視されているとも言えますし。
 ユートピアに見せかけたただのディストピアですねぇ。
 そこに気付いたのが、主人公のトァンたち少女ということになります。主犯というか、気付きを与えたのは「死んでしまった」ミァハですが。

 京極夏彦『ルー・ガルー』、アニメ『PSYCHO; PASS』なんかの社会制度を思い出しました。
 理想的な管理社会。見せかけの平和。
 現実世界もその内そうなったりしそうで嫌ですねwもうなりかけているとも言えますが。


 そう言えば、この作品には大掛かりな仕掛けが施されています。
 本作品の結末に関わるものですので書きませんが、芸の細かさにびっくりです。
 ただ、個人的には本作品の結末は無いと思っています。非合理性と合理性が同居するのが人間、生命であると思うので、合理性のみになった場合、人間として、生命として在り続けられるのかと。


 伊藤さんの他の作品も読んでみようかと思います。
 伊藤さんが夭折されていなかったら、今はどんな作品を書かれていたのでしょうか。それも気になりました。
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