浦賀和宏 『彼女は存在しない』 (幻冬舎文庫)

彼女は存在しない (幻冬舎文庫)彼女は存在しない (幻冬舎文庫)
(2003/10)
浦賀 和宏

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 以前紹介した『記憶の果て』、『時の鳥籠』の作者さんの別作品です。
 上記に作品はとても不思議な作品でしたので、他の作品も読んでみようと購入。
 こちらは幻冬舎さんから出版されているものです。

評価(☆5が満点)
☆4

あらすじ
 平凡だけれど、恋人もいる幸せな生活を送っていた香奈子(かなこ)の日常は、ある日突然、恋人の貴治(たかはる)を殺されたことにより終わりを告げる。
 同じ時期、根本有希(ねもとゆうき)は、母親の死を契機に異常行動をとるようになった妹に不信感を募らせていた。そして根本は、妹に多重人格ではないかという疑いを向け始める。
 香奈子と根本の二人は、やがて事件を巡って結び付いていくことになる。事件の背後に見え隠れする女性、「アヤコ」は一体誰なのか。 

感想
 本作は、純粋に分かりやすく面白かったですw
 ミステリーとしてキチンと完成されているので、読んでいて面白かったです。
 決して前回紹介したものが悪いという訳ではなく、一ミステリー作品として素晴らしかったということです。あしからず。

 作品は、香奈子と根本有希という二人の視点を通して進んでいきます。
 というよりも、二人それぞれのエピソードを交互に繰り返すことで作品は進んでいきます。彼らのエピソードの核心にあるのは一つの事件と、ある一人の女性です。
 視点の変更のおかげで、別の角度からの考察が事件に加えられることになるのでより深く話に入れます。


 前回紹介した二作品、『記憶の果て』、『時の鳥籠』と同じく、この作品でも『「私」探し』がテーマにあるようです。
 デカルト的な「私」ですね。
 「我思う故に我あり」の「私」であり、自我ですね。アイデンティティー。
 アイデンティティーの危機に立ち向かう人間、というものを作者さんが好きなのかもしれませんね。上手く言語化できませんが、自分の周りの世界と自己の在り様、戦いみたいなものを書きたいのかもしれません。

 『記憶の果て』では、主人公は父親の死を契機に自己の出自の秘密に触れ、自己が揺らぎます。
 『時の鳥籠』でも、主人公の少女は閉じた時間と記憶喪失のなかで、自分に迷います。
 本作でも、根本の妹は多重人格という自己意識の危機にあります。

 こうした自分の足元がぐらぐら揺らいでいる人たちの格闘の話、という風に浦賀さんのこれらの作品はまとめられるかもしれません。
 他の作品は未読ですので、この作家さんの特徴としていいのかは疑問ですが、少なくともこれらの作品にはこうしたものがテーマとして見られます。


 ミステリー部分は、素直だったと思います。
 トリックについては、ここで触れることができまない類のものなのでご了承ください。
 無理やりな展開、ご都合主義的な推理といったものではなかったということだけ書かせてもらいます。
 タイトルです。 
 綾辻行人さんの『Another』などに通じます。


 久々に面白いミステリーでした。
 初版発売から10年後に人気が出たという不思議な作品だそうです。
 でも、人気になるだけの面白さを持っている作品であることは確かです。
 「もっと評価されるべき作品」タグが必要ですw
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上甲宣之『JC科学捜査官 雛菊こまり~』(『このミス』大賞シリーズ)

JC科学捜査官 雛菊こまりと JC科学捜査官 雛菊こまりと
(2014/05/22)
上甲 宣之

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 タイトルから途轍もない地雷臭がする作品www
 ヤバいですよね。『JC』とか書いてる時点でイタイ。レジに持っていくのをちゅうちょしました、私(^_^;)
 ではそんな地雷臭のする本作の感想です。

評価(☆5が満点)
☆2.5

あらすじ
 神戸市内の大学構内で、女性講師の刺殺死体が発見された。被害女性は、前日の夜、ネット上で有名なオカルト話「ひとりかくれんぼ」の再現実験を行っていた。
 時を同じくして、弱冠14才で、アメリカの大学でPh.D Candidateを取得した天才少女、雛菊こまり(ひなぎくこまり)が来日していた。なんと彼女はその才能を認められ、FBIの特別研究員として日本の科捜研との人材交流のために派遣されていたのだった。彼女の派遣先は、祖父も務める兵庫県警科学捜査研究所。
 こまりは、最先端の科学捜査手法を用いて派遣先の科捜研が関わったオカルト事件の謎に迫る。

感想
 タイトルが放つ禍々しさに反して、中身は正統派ミステリーでしたw
 テレ朝のドラマ『科捜研の女』とか『臨場』のような刑事ではなく、裏方の鑑識さんが主役の話でした。
 正確には、科捜研の職員なので、単純な鑑識とは違いますが。

 事件は先に書いたように「ひとりかくれんぼ」が絡み、オカルトじみた雰囲気を持たされています。
 この部分が、おもしろそうだと思って購入。
 オカルトじみた事件を最新科学は解き明かせるのか、がテーマになっています。

 作品の随所に最新(かどうかは管理人には判断が付きませんが)の捜査手法が、惜しげもなく登場します。
 ルミノール反応以外の血液飛沫検出方法、皮膚や衣類から指紋を検出する薬品などなど、豆知識が増えます。けっして、その知識を悪用して完全犯罪をしてやろうとか考えないでくださいw


 以上が興味深かかった点です。
 以下苦言。
 
 主人公がJC=「女子中学生」である必要が、最後までわかりませんでした。
 つまり、こまりちゃんが女子中学生である必要がまったくなかったということです。
 たとえば女子高生でも、大卒新人でも、ベテランでも構わないと思いましたし、そう言った作品の書かれ方になっています。
 女子中学生という設定のために、現実味が薄いです。主人公を若年の天才にしたかったのでしょうが、中学生の少女である必要性が特に感じられませんでした。

 単なる話題作りなんでしょうか?
 そうだとしたら非常に残念です。全体的にしっかりした面白いお話だったので、こんな所で自らケチを付ける必要がないです。
 そもそもそこまで捜査の天才のような描かれ方もされていませんでしたし…。化学の天才でしたが。

 もう一点。
 トリックについてはとても面白く読めたのですが、犯人の提示がいただけませんでした。
 最後の最後まで捜査の対象外に置いておいて、「実はこの人が犯人です」という犯人提示は個人的に好きではありません。
 『このミス』出身者なら、その辺も配慮して欲しかったです。
 犯人を探偵と一緒に推理していくというのも、ミステリーの楽しみ方の一つではないですか?


 事件自体は徹底して科学的な手法と、捜査によって解明されますので、オカルトじみた事件を期待しすぎないことが注意点です。
 「ひとりかくれんぼ」というオカルト話の使い方としては、そこそこでした。
 とは言え、見立てとかに使われるのではなく、あくまで作品の彩りの一つというところですのでご注意を。

 原作版「あとがき」に、「博士号をもつ」とこまりの紹介がありますが、本文内では「博士号候補生選抜試験に合格」とあるので、Ph.D Candidate(博士号候補生)が正しいのではないですか?
 少し気になりました。

 最新科学捜査手法に興味がある人には、レジに持っていく価値があるかもしれません。
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ゆーいち

Author:ゆーいち
ゆーいちです。

このブログでは特にジャンルを絞らず、自分が読んだ作品の感想を書いていこうと思います。
記事中の作品についての評価は、おススメ度と見てください。

出来るだけ週一程度のペースで更新していきたいと思います。

よろしくお願いいますm(- -)m

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