法条遥 『忘却のレーテ』 (新潮nex)

忘却のレーテ (新潮文庫 ほ 24-1 nex)忘却のレーテ (新潮文庫 ほ 24-1 nex)
(2015/04/30)
法条 遥

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評価(☆5が満点)
☆3.5

あらすじ
 両親を事故で亡くした女子大生、笹木唯(ささき・ゆい)は、高額の報酬と引き換えに記憶消去薬「レーテ」の臨床実験に参加することに。
 完全に閉鎖された施設内で、「レーテ」の制作者である小野寺エリス(おのでら・えりす)博士の監視のもと7日間過ごす。毎日「レーテ」によって記憶がリセットされる唯と5人の被験者たちだが、実験途中のある日、目が覚めると流血死体が発見され――。

感想
 面白かったです。
 一日ごとに記憶がリセットされるというシチュエーションも面白かったです。 また閉鎖空間内での殺人事件という舞台設定も好きでした。
 シチュエーションから、どことなく、米澤穂信『インシテミル』を思い出したりしましたが。 『インシテミル』は、映画版はアレでしたね(´・ω・`) 原作はよかったのに。


 感想ですが、個人的にはあるものがなければこの作品はもっと楽しめたのにと思ったり…。
 親切丁寧な設計のおかげ、というのもあるのでしょうし、無くす訳にもいかないものではあるんでしょうが、無かった方がより一層仕掛けを楽しむことができたような気がします。

 さて、作中に出てくる創作の薬品「レーテ」(忘却の川である「レテ河」に由来とのこと)の記憶消去ですが、現実世界でもそのうちできそうですね。 
 欲しいようないらないような。  あ、黒歴史的な記憶はきれいさっぱり消してほしいですけどねw

 記憶の消去と改竄は、動物実験(マウス)ではすでに成功しているみたいですし。 そう遠くない未来には、登場するのかもしれません。 まぁ、前述の記憶操作が薬品でも実現できるのかどうかはわかりませんが。
 作中でもたびたび指摘されていましたが、悪用すればひどいことになりそうですね。 上手に使えれば、PTSD治療などに有効な治療法の一つにはなりそうですけども。



 さて、そうしたあれこれを取り除くと、本作は割とオーソドックスなクローズドサークルものですね。
 作中で起こる殺人事件そのものに関しての推理はほとんど展開されません。というか、一日ごとに記憶がリセットされるので、推理可能な時間がほとんどないということもありますが。
 ありもしない記憶に従って推理を展開するとか、恐怖ですしw

 本書のトリックの粋は、殺人事件そのものにあるわけではなく、その周縁にあります。 それも、読んでみると「ああ、法条さんっぽい」と思うところに使われています。

 殺人事件そのものの推理を楽しみたい人には物足りないかもしれませんが、創意工夫の凝らされた作品だと思います。
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佐藤青南 『サイレント・ヴォイス』 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

サイレント・ヴォイス 〜行動心理捜査官・楯岡絵麻 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)サイレント・ヴォイス 〜行動心理捜査官・楯岡絵麻 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2012/11/06)
佐藤 青南

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評価(☆5が満点)
☆3.5

あらすじ
 警視庁捜査一課巡査部長で取調官の楯岡絵麻(たておか・えま)、通称エンマさま。行動心理学を用いて、相手の何気ない仕草や行動から嘘を見破るその手腕で恐れられている。
 幼馴染殺害容疑がけけられた歯科医、人気俳優の夫を殺害を自白する国民的女優の妻、クレーマー殺害容疑の占い師、絵麻の同僚を窮地に追い込んだ音大生。
 取調室で絵麻が彼らに向かいあう時、事件の真相が明らかになる。

感想
 警察が舞台でありながら、メイン舞台は事件現場ではなく、取調室。それどころか、基本的に主人公たちは取調室の外に出ることすらないという、いわば安楽椅子探偵小説です。
 あ、でも探偵行為・推理はしていないので、厳密には違いますが。


 この作品の中で特徴的なのが、推理を武器として犯人を落とすのではなく、心理学に基づく観察で追い込んでいくという部分でした。
 刑事ドラマでよくあるような取り調べというよりも、どこか研究室的な感じがします。


 ですが、手法の珍しさだけがこの作品の面白いところではありません。
 主人公である、女性刑事・楯岡絵麻のキャラクターもいい味を出しています。 Sっ気があるところが良いですね。 犯人の嘘に容赦なく切り込んで、真相を明らかにするその手腕にしびれます。


 一方で、先にも触れましたが、理論的に推論を組み立てて犯人を追いつめる形式の作品ではないので、推理小説をお望みの方は注意です。
 取り調べの妙技を楽しむ感じですかね。 刑事小説とも作風を異にしていますが。
 かと言って『半落ち』等とも違うのですが。 とりあえずわりと独特だと思います。 感動系でもありません…。
 作品内で展開される心理学の理論に関する話は楽しめました。

 基本的に、心理学の理論を基にして犯人の行動分析を行い、彼らの自供の嘘を暴いていくのが本書の流れです。
 が、下手をするとワンパターン化、マンネリ化しかねないのですが、長編ではなく短編集の形になっていて、あまり飽きを感じさせないようになっていました。 
 こうした点もあって、長編作品には向かないような気もしますが。


 作品の雰囲気は、次回作以降も特に変わらないのではないかと思うので、後を追うかどうかは考え中です。現状、5作目ぐらいまで出版されていたと思います。

浦賀和宏 『姫君よ、殺戮の海を渡れ』 (幻冬舎文庫)

姫君よ、殺戮の海を渡れ (幻冬舎文庫)姫君よ、殺戮の海を渡れ (幻冬舎文庫)
(2014/10/09)
浦賀 和宏

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評価(☆5が満点)
☆2.5

あらすじ
 三枝敦士(あつし)は、Ⅰ型糖尿病の妹・里奈(りな)が群馬県の川で見たというイルカを探すため、妹と友人とともに現地へ向かう。当初イルカの存在自体を信じていなかった敦士だが、街の人々の不審な様子からイルカの話には何か秘密があるのではないかと推測する。
 やがて彼らが辿りついた真実は、悲痛すぎるさらなる運命の扉を空けていく……。
 切ない青春を描いた傑作恋愛ミステリー。

感想
 中古で安くなっていたので購入。

 大まかに言って、前後半に分かれている作品です。
 前半はあらすじに書いたように、理奈が見たと主張する川にいるイルカを探す話
 後半はイルカを巡って起こったある事件のその後をメインに据えた話です。
 どちらも登場人物は同じですが、時系列が変更されています。後編が前編の未来に置かれています。


 評価が低いのは、主人公である敦士がどうにも好きになれなかったからです。
 特に前半の子ども時代(高校生2年)が、もう最悪でした。シスコン気味な部分は置いておいても、その他が目に余りました。自己中心的であり、ご都合主義的であり、暴力的でありと、好きになれそうな部分が無い。しかも高校2年生…。
 読んでいてイライラしました(^_^;)
 まぁ、後半大人になってからはまともになっていて読みやすくなりましたが。

 あと、半ばぐらいで話の筋と言うかオチまで読めてしまったというのもありますが、そちらは別にいいです。辿りつきやすいように、わかりやすく書かれていたと思うので。
 


 個人的には、青春・恋愛ミステリーという看板には賛同できません。 この文句に惹かれて読もうと思われている方は、再考された方が良いでしょう。
 結末にショックを受けるでしょうから。
 ミステリーと言うよりは『アナザーへブン』のような作品でした。あちらよりは全然マイルドでしたが(^_^;) ちなみにですが、作風はまったく異なります。『アナザー~』は、ホラーミステリーです。
 マッド・コックのアレです。脳みそ料理のアレ。

太田紫織『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』(角川文庫)

櫻子さんの足下には死体が埋まっている 謡う指先 (角川文庫)櫻子さんの足下には死体が埋まっている 謡う指先 (角川文庫)
(2015/02/25)
太田 紫織

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評価(☆5が満点)
☆3

あらすじ
 北海道は旭川の冬。僕は、櫻子さんと薔子(しょうこ)さんに頼まれて、旭岳にある彼女の親類の別荘を訪れることに。訪問の目的は、最近亡くなったという別荘の持ち主の遺品整理だ。驚いたことに、骨と謎にしか興味を持たない櫻子さんも同行するという。
 別荘で過ごしていると、折悪しく暴風雪に見舞われて停電がおきてしまう。しかも設置されている暖炉の中から人の骨が見つかり…(「凍える嘘」)。
 「Bloody Valentine's Day」、「アサヒ・ブリッジ・イレギュラーズ」の三本でお送りするキャラミステリー。

感想
 何故かアニメ化、コミック化されるとのお知らせが帯にありました。
 これ、アニメ化出来るのか…?  白骨アニメとかヤダなぁ(笑)


 それは置いておいて、本編の感想です。
 今回だと、あらすじにある「凍える嘘」が面白かったですね。
 櫻子さんの「異様さ」と、骨という、この作品の性格を一番出しているかと思います。
 冷静に、周辺の事情に頓着せず結論だけを重要視する人間性。探偵像としては良く見ますが、日常におかれてみると異様だということが浮き彫りになりますね。

 「アサヒ・ブリッジ・イレギュラーズ」は、「ベイカーストリート・イレギュラーズ」のもじりなんでしょうね。
 とは言え、タイトル以上のものはなかったかと思いますが。
 「Bloody~」は、犯人がキモかったです。 それ以上の感想は特に持てませんでした。「らしさ」も特にありませんでしたし。


 他は、以前にも言ったかと思いますが、あの「裏で糸を引いている人間がいる」という設定がどうも好きになれません
 というか、この作品には余分なもののような気がしてならないのですが、いかがですか?  漂うB級映画臭…。
 長く引っ張らないで、さっさと幕引きをした方が良いような気がします。とある子ども名探偵みたいになりますよぉ(笑) かといって金田○少年の「地獄の傀儡師」のような立ち位置という訳でもないのがまた…。

 
 最初の話題に戻りますが、この作品はあまりアニメ向きではない気がします。
 一気にオワコンにならないことを祈ります…。

岡崎琢磨 『珈琲店タレーランの事件簿 4』 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

珈琲店タレーランの事件簿 4 ブレイクは五種類のフレーバーで (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)珈琲店タレーランの事件簿 4 ブレイクは五種類のフレーバーで (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2015/02/05)
岡崎 琢磨

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評価(☆5が満点)
☆3.5

あらすじ
 「主人公はレモンが書店で爆発する場面を想像して、辛気臭い思いを晴らしたんやったな」。
 五年前に他界した大叔母が失意の美星を救うために仕掛けたのはちょっとした謎だった――京都市内にひっそりと佇む喫茶〈タレーラン〉の庭に植えられたレモンの樹の秘密を描いた「純喫茶タレーランの庭で」を始め、5つの事件と書きおろしを加えた短編集。

感想
 面白かったです。
 やっぱりというと失礼かもしれませんが、このシリーズは短編集の方が面白いですね。短編が上手ですね。短い中でもきちんとまとまっているし、伏線も張られているし。


 今作は「ブレイクは五種類のフレーバーで」というサブタイトルになっているように、5つの短編からなっています。実際はそれに加えて一遍のショートショートが付けられています。


 どの短編も結構面白かったんですが、3つ目の短編「消えたプレゼント・ダーツ」は好きになれませんでした。
 この話の筋・トリック自体は別に嫌いではなかったのですが、とある登場人物が嫌いでした。
 意味がわからない自分への自信から他人を見下すような人種。
 まぁ、ダーツ上級者が初心者を笑っていただけなら良かったんですけどね。それ以上となるとちょっと鼻白むというか…。


 それ以外の短編は結構面白かったです。
 序盤の二編の仕掛けは「どこかで」見たことがあるものでしたけど(^_^;)

 他だと、「可視化するアール・ブリュット」のトリックの種が面白かったですね。良く知っているあの道具にそんな裏側があるとは知らなかったですw 


 今後も面白い中・短編お待ちしています。
 てか、今回はコーヒー蘊蓄が無かったですね、そう言えば。……ネタ切れ?
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